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第1話
大学を卒業し、砂糖を取り扱う中小企業に勤め初め、3年。
俺、中山樹は部長の提案で、SNSでの宣伝を兼ねたツイート係を任されている。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます」
出社すると同時にあちらこちらから、挨拶の声が飛び交う。
俺はデスクに座ると、PCを立ち上げた。
毎朝の恒例行事だ。
「さてさて、と」
ネクタイを緩ませつつSNSにログインし、ツイートを考える。
パチパチとキーボードを弾いた。
『皆さん、おはようございます\(^o^)/今日も楽しい1日の始まりです!頑張りましょう!今朝は近所のパン屋のサンドイッチで朝ごはん!ここのツナサンドが抜群です!』
出社前にテーブルに乗せたサンドイッチとマグカップに淹れたコーヒーとを自撮りしていたので、文章に添えた。
早速、SNSで公開したサンドイッチを片手に持ち、頬張りながら、昨日のツイートの通知を確認。
幾つかの扱う商品は全く異なる企業、また、昨日はSNSで公式サイトがある、飲み物と摘みを購入したので、撮影し、
『お仕事だった皆さん、お疲れ様でした!まだ、お仕事中の方はお疲れ様です(o^∀^o)お休みの方はどんな休日でしたか?今日は松下さんのところの摘みで軽く一杯!』
そんな俺のツイートにいいね、や、RT、リプが来ている。
『きらめきさん、お疲れ様でした!松下さんのとこのイカフライ、美味いですよね(≧▽≦)』
酢や醤油を扱う企業さん。
『あー!ヤバい!禁酒中なのに、きらめきさんのお陰でコンビニに走り出しそうだw』
こちらは文房具を扱う企業さん。犬のアイコンが可愛らしい。
俺は幾つかのリプにいいね、を返し、画面をスクロールし、探した。
「あ!いた!」
【きらめきさん、お疲れ様でした!同じく帰宅し、晩酌なうです、飲みすぎ注意ですよー♪】
添えられた写メには、なにやら、アボカドやトマトなどを使った手の込んだ手料理、そして、ワイングラスには白ワインだろうか。
「....癒されるなあ....」
生理用品を扱う企業の人だ。
いつも暖かい文章と写メが添えられている。
アイコンは企業の物で、中の人がどんな人か、は検討がつかない。
「....きっと美人だな、間違いない」
美人ではなくても、心遣いの出来る、穏やかな女性だろう。
「会ってみたいなあ....」
いつしか、やり取りを重ねるうちに、俺はツイートでしかわからない、その企業、株式会社レボリューションの中の人、に会ってみたい、と思うようになっていた。
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