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第29話
白亜は城の中庭に咲く綺麗な花を摘む。この花園は自分で作ったものだ。白亜は子供の頃、よく母と花の手入れをした。
母は花が好きな人であった。
白亜の母は白亜が十ニの時に他界した。
美人薄命とは言うが、白の国の出身者は短命な事が多い。
父は母をとても愛していたので、その死が耐えられなかったのか、母の死の後直ぐ隠居し、田舎に籠もってしまった。
今も元気でやっているとは思うが、急に老け込み顔も見せてくれない。
母が亡くなった時、弟はまだ六つであった。
だが彼も母と花を育てた記憶は忘れなかったらしい。
白亜の花園は綺麗なままである。
それがすごく嬉しく思えた。
白亜は綺麗な花を選び、花束を作る。
なんだか、恋人に作っている様な気分だ。
こんな気持ちになるのは初めてである。
少し不思議に思いつつ、いつもより念入りに選んだ花を海まで持っていき、海岸から海に流した。
手を合わせ、海と山の精霊達に祈りを捧げる。
『海や山を荒らしてしまい申し訳ありません。どうかお許しください』
そう、お祈りを白亜は家臣達が止めに入るまで熱心に続けた。
雪もまだ積もっていると言うのに、ポカポカとした陽気で、寒さ等感じる事は無か った。
その日の海は穏やかで、魚貝類も沢山取れたとの事である。
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