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 いつものメイクとは違うからか少しの違和感はあるものの、この顔にも今日一日でなんとか慣れて来た。なんというのか飛ぶ鳥を落とす勢いの人気アイドルグループ『IKB69』の一員というよりは、クラスメートの可愛い子タイプの『ハロー娘。』の一員って感じかな。  つまりはキラキラアイドルというよりは、親しみやすい普通に可愛い女の子たち。そこに混じってても違和感のないような自分に苦笑い、視線を車内に戻した。その時、こちらを見ていた結木さんと目が合った。 「なに」 「うふふ。可愛いなって思って」 「……あっそ」  なんとなく美少女の結木さんに言われたのに照れ臭くって、結木さんから視線を外した。それから程なくして電車は秋葉原の最寄駅に着き、二人でお目当ての店へと急ぐ。  裏通りに入って程なくして小さな立て看板の向こうに英国仕様の豪奢な庭が見えて、そこに薄い水色を基調としたお洒落なカフェが顔を覗かせた。 「お帰りなさいませ。お嬢様方」  まずは庭先で赤いバラの手入れをしていた執事服姿の本物のお兄さんから笑顔で挨拶をされた。それから店に入ってみると、 「お帰りなさいませ!」  矢継ぎ早の歓迎ムードで、男装の麗人(スタッフ)たちに出迎えられる。  なんつーか、本当ならば俺の場合はお帰りなさいませ、ご主人様なんだろうなとぼんやり思いながら、俺と結木さんは案内された席に座った。適当に飲み物を注文すると、 「やっとガールズトークが出来るね」  結木さんにそんなことを言われ、思わず吹き出してしまう。その少しだけ声をひそめたガールズトークの話題は、ベーコンレタスな話題だったりするんだけども。  店内には俺たちの他にも一組、男女のカップルのお客さんがいた。他の客は女の子二人や、数人の女の子グループがほとんどだ。  正直、ここにいると落ち着いた。ここにいる全員が腐女子や腐男子なわけだけど、見た目は至って普通の子たちばかりだ。腐女子を含めたオタクはそれぞれの世界に夢中で、他に目を向けないのがいい。  実際、ここに来るまでは美人な結木さんと二人だからか注目を浴びまくりだったのに、ここでは誰も俺たちを見ない。本当は男女のカップルなんだけど、俺の見た目がもう腐女子だからもあるだろうけども。 「今度さ。即売会も一緒に行かない?」 「うん。いいよ」 「ほんと?」  小声で『やったあ!』と叫んだ結木さんを可愛いとか思っちゃったことは、壱人には内緒。冬コミは結木さんも一緒に、姉ちゃんと三人で回ってみようかな。  学園ものにおいての転入生の()り方について真剣に論争を交わしてたりする俺たちは、傍目(はため)には完全な腐女子の友達同士に見られているだろう。隠れみの(女装コスプレ)の威力をひしひしと感じながら、俺たちはちょっとしたティータイムを一緒に過ごした。 ※注釈※ こちらを書き下ろした当時は某48や某娘。の全盛期でした。

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