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 制服に着替え、簡単に身支度を済ませる。階下に降りて簡単な朝食と歯磨き、洗顔なんかを済ませて玄関に向かっていると、 「壱人。母さん、今夜は夜勤だからお父さんをお願いね」  お袋から声を掛けられた。 「ん。行ってくる」 「いってらっしゃい」  俺の母親は看護士で家を空けることが多く、反対に作家の父親は自室にこもることが多い。お袋のスリッパの音を後ろに聞きながら玄関のドアを開けると、 「壱人、おはよ」  ドアの前に昨日の女が立っていた。 「壱人くん、一緒に学校行こー!」  毎朝、そんな可愛い声を聞いていたのはもう10年も前のこと。あの頃は何も考えずにいられたし、毎朝、あいつと手を(つな)いで通学していた。 「眠そうね。もしかしてあまり眠れなかった?」  それが小学二年生にもなると、男同士で手を繋ぐのは変だと周りから言われ始め。そうしてあいつを特別な意味で意識し始めてからは、反対に遠ざけてしまった。 「実は私もなんだ。昨日はなんか興奮しちゃって……」  ヘンな意味じゃないからねと続けるこの女は、今のところ世間的には俺の彼女と言えるだろう。いつものように言い寄られて付き合うことにしたから、そういう意味で言うと。  本命とそうなることができないのなら、相手は別に誰でもいい。世界中の女を敵に回しそうな酷い言い分だと自覚もしてるけど、性処理をできる穴があるならそれで。  言い寄られたら付き合って、飽きたら別れるの繰り返し。そして、別れたらすぐに次の女に言い寄られる。その繰り返しのお陰か二股を掛ける暇もないし、だから本当の俺は世間一般的に言われている浮気性でもなんでもないと思っていたりする。一度付き合ったらその女以外には手を出さないし。  ただ、どの女にも夢中になれないだけだ。俺が欲しいのは一人だけ。だったら誰とも付き合わなければいいんだろうけど、彼女と言われる相手がいればその間は誰にも言い寄られなくて済む。正直、毎日のように相手から一方的な想いを投げ掛けられるのは精神的にもかなりきつい。  だからその辺の差し障りのない相手と付き合ってきたが、今回は少しだけ勝手が違う。一応は今回の俺の彼女、結木(ゆうき)はうちの学校でも一、二を争うほどの人気がある。それから、俺の好きなあいつとは正反対の見た目をしていて。 ※『お袋』は死語ですね;

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