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 それなのに、結木とは歴代の彼女よりも長く続いている。だいたいの女とは二週間ぐらい付き合って、あいつとの違いを痛感して終わってしまう。それが結木とあいつとは、他の雰囲気や見た目が似た女とは比にならない共通点があった。 「(いずみ)……」 「……あ……、んっ」  セックスの最中、呼んだ名前は結木の名前じゃない。結木の名前は読み仮名こそあいつと同じだが、平仮名で『いづみ』だ。  結木の顔の全貌が分からないぐらいまで近付くと、あいつと同じ場所にホクロがある。その肌の弾力や柔らかさ、決定的には胸の大きさが全く違うが、背格好までもがあいつと同じで。  だから名前を呼びながらその体を抱けば、あいつを抱いてると錯覚(さっかく)出来た。結木には悪いが、あいつの身代わりとして結木を側に置いていた。そのことが結木は勿論、あいつをも傷付けることになるとは知らずに。 「それでね……」  いつもより人気の少ない通学路。一般生徒は夏休みに入った初日。俺は補習のために、学校へと向かう。結木は補習の必要はなかった。俺に付き合うと言い出して、こうして隣で笑っているけど。   本当のことを言うと、結木には補習を受けて欲しくはなかった。夏休みの補習は二組で一つの教室が使われて、俺のD組とあいつのC組とは一つの教室を使うことになる。 「こないだのワンピース、買ってみようかと思って」  あいつとは中学からは同じクラスになったことがない。自分から遠ざけといて、実はこの補習をひそかに楽しみにしていたのだ。だから、結木に邪魔されたくないのが本音。 「ほら、あれ。壱人が選んでくれたピンクのやつ」  俺に負けず劣らずおバカなあいつのことだ。補習を(まぬが)れた教科はないはず。そうなれば、補習の間はあいつと同じ教室にいられる。 「……って。壱人、聞いてる?」 「ん。ああ」 「じゃあ、今私がなんて言ったか言ってみて」 「…………」  ずっと思考をよそに飛ばしていたからか、とうとう結木が(へそ)を曲げてしまった。これがあいつなら可愛く思えるのに、申し訳ないがあいつ以外だとただうざいだけだ。 「悪い」  それでもその気持ちを押し隠し、そう謝って前を向き直した瞬間、誰かが俺らを足早に追い越した。

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