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 結局は泉を徹底的に無視したまま、何日かの日数が過ぎてしまった。相変わらず俺と泉の補習は続いているが、お互いに及第点をもらう(きざ)しは見られない。  俺の場合は意図してぎりぎりで合格しないように調整していて、それは不本意ながら補習を続けて行くためだ。一ヶ月以上の長期に及ぶ休みの間に少しでも泉と同じ空間にいたくて、そんなあまのじゃくな状態に結木も付き合ってくれていた。 「あれ。橋本。練習は?」 「サボり。米倉に会いたくて抜けてきた」 「ぶはっ。おまえなあ」  今日も二人のそんなふざけた会話が鼓膜を引っ掻いた。橋本はノンケだと分かり切っているのに、そんな笑えない冗談がまた苛立(いらだ)ちを(つの)らせる。  橋本はスポーツマンらしくそれなりの長身で、泉の横に並べば泉が斜め下から見上げるような状態になる。それに笑い掛ける橋本の間延びした馬鹿面(ばかづら)が気に食わなくて、俺は二人から視線を外した。 「……あちいな」  むせ返るような陽気と気温に独りごちれば、すかさず結木が下敷きで俺のことを扇いで来る。ペコペコと情けないプラスチックの薄い板がたてる音を聞きながら、視線は窓の外へ移した。  歴代の彼女全員がそうだったが、仲が深まれば深まるほど、わざとらしいほどに甲斐甲斐(かいがい)しく世話を焼いて来る。そんな馴れ馴れしい態度が気に入らなくて次を探すのだが、結木のことだけはまだ手放せそうになかった。  泉はそんな俺のことをどう思っているんだろう。  ……違うな。俺のことじゃなくて、結木のことをだ。  泉は俺が二週間ほどで彼女を取っ替え引っ替えやっているのを知っているし、となれば結木のことを俺の本命だと思っているんだろうか。実際に付き合って行くうちに考え方なんかに共通点も見付かって、それなりに仲良くはやってはいるのだけれど。  結木は自分がモテることをきちんと認識していて、それに対する対処の仕方やら考え方が俺と似ていた。恋人としてじゃなくて友達としてなら長く付き合えたかも知れないなと、そんな最低なことを考えてしまうほどに。

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