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カーテンの向こう側  それから更に数日が過ぎても、夏休みの補習授業はまだ続いていた。泉のことはもう追わないと決めたのに、なかなか肝心の及第点が取れない。  自分のことは常々馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、我ながらこれほどまでだとは思っていなかった。夏休みももう半分が過ぎてそろそろ思い出も残したいのに、今年はこのまま補習に明け暮れて短い夏を終えてしまうんだろうか。 「米倉、おはよ」 「あれ、橋本。おまえまだ補習終わってなかったっけ」  それは俺の上を行くおバカな泉も同じことで、教室に行くと嫌でも二人が視界に入って来る。 「いやー、なんでだろうな」 「つか、それって練習をサボりたいだけだろ」  補習を受けるメンバーが半分以上減った今も、橋本もまだ授業を受けにやって来る。意識して会話を拾っているわけじゃないのに、どうしても二人の会話は耳について仕方なかった。  お盆も間近に迫り、大学生の姉貴が昨夜、帰省した。お盆には去年、結婚したばかりの姉貴も旦那と旦那の連れ子の甥っ子と姪っ子を連れて帰省するだろう。泉の姉貴の美森ねえも少し前に帰省して、俺の顔を見るなり何故だか厭味を言って来た。  泉とは家族ぐるみの付き合いだから、お互いの姉貴も自分の姉貴のようなものだ。特にうちの姉貴たちと泉の姉貴も俺たちと同じように同い年で、三人の姉貴がいるようなものだ。 『ねえ、壱人くん。今回の彼女は珍しく長く続いてるんだって?』  俺の顔を見るなり美森ねえは、痛いとこを突いてきた。 『彼女が本命ってことか。壱人くんは別の誰かのことが好きだって、ずっと思ってたんだけどな』  いきなり核心を突かれ、悪戯に鼓動が跳ねる。泉と同じ顔でそんなことを言われたら、平静でいられるはずがない。有り得ないことに心を見透かされたような気分になり、俺は泉から視線を外した。  初めて会った頃から思っていたけど、泉が女顔だというのもあるのかこの姉弟は驚くほどよく似ている。泉と同じ顔でそんなことを言われたら、俺の(ゆが)んだ思いを泉に見透かされてしまったようでいたたまれない。

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