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02
秋本番の10月中旬。あんなにギラギラと照り付けていた夏の陽射しは目に見えて和らいで、陽射しが当たる場所はなんとも心地いい。お気に入りの音楽を聴きながら陽射しが当たる机に突っ伏すと、
「……ぶっ!」
頭上から誰かに思い切り後頭部を押された。
「なにすんだよ!」
思わずイヤホンを外して叫ぶ俺。
「米倉はどっちの味方だよ!」
俺の後頭部を押した犯人であろう橋本からは、ギャンギャン吠えるも謝罪の言葉はない。おまけにそんな馬鹿なことを言い出すもんだから、
「どっちの味方も敵もないっての」
呆れたようにそう言い捨てると、机にぶつけて赤くなってるであろう額を撫でさすった。そんな俺たちをクラスの女子たちが遠巻きに眺め、クスクス笑っている。
彼女たちは最初こそ俺と結木さんを見てこそこそやっていたが、橋本の参入で状況は一変。今は恐らく、ドタバタコメディーのショートコントでも見ている感覚なんだろう。
「結木さんさ……」
「ん。なに?」
「……あ、いや。なんでもない」
結木さんに今なら普通に女友達が出来るよって、そう言おうと思ったんだけど。それはなんだかお節介な気がして、その言葉をぐっと飲み込んで再びイヤホンで耳を塞 いだ。
「そう言えば結木。おまえ、米倉とはどんな関係なんだよ」
「……気になる?」
結木さんが普通一般的な女子とは違うのは見た目からも明らかで、まずはその外見から女子たちも彼女のことを敬遠していたんだと思う。
「い、いや。別に気になってない、けど……」
これが少し天然で癒し系美少女の田辺さんだとかなら、気軽に話し掛けたりも出来たのだろう。実際に田辺さんは女友達がたくさんいるし。
ただ結木さんは一筋縄ではいかない性格で、自分が美人でモテるのをちゃんと自覚しているし、言いたいことはズバズバ言う性格だから彼女たちに受け入れられなかったんだと推測出来る。
「……私に米倉くんを取られるのが怖いとか?」
「ば、ばか言うなっ!」
だけど本来の結木さんは自分が興味のある好きな話題になると唾を飛ばしながらのマシンガントークが止まらなくなるし、その見た目によらず面白いし、案外、取っ付きやすい。
今も会話の内容は聞こえないけど、橋本は結木さんに押されっぱなしで、真っ赤な顔で言葉に詰まっていたりする。
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