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 壱人さえ暴走しなければ平和な毎日が過ごせたのに。そう思うと例の噂に踊らされていた頃の自分が可哀相になって来た。  モテる男の影響というものは思ったよりも絶大で、壱人の一喜一憂に周りが反応している。水上たちといるとそれが水上と村上、おまけに結木さんの分まで増長されるようで、言ってみれば3倍になるんじゃないかといらぬ心配をしてしまう。 「はあ……」  壱人と両思いになるまでも何度も溜め息をついて来たけれど、付き合い始めたら始めたで、やっぱり溜め息は増えて行く。  俺は平和で平凡な日常を過ごしたいだけなのに。どうやら壱人と付き合っていく限り、その願いはなかなか叶わないらしい。  愛と平和という壮大な永遠のテーマについて考え始めて数分、 「あれっ、泉。まだ着替えてねーの」  俺が来るのを待っていて、痺れを切らしたであろう壱人の奇襲でそんな貴重な時間が奪われた。俺が着替えさせてやるよ、とかなんとかオヤジ臭い言い草で盛ってくるバカ人に心底呆れた俺だった。

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