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二人とは友達というよりはまだ単なる顔見知り程度だけど、移動中に鉢合ったら挨拶するくらいの仲にはなった。つまりは二人に顔を覚えられたことになるのか。
んで、もし万が一にでも壱人の彼女に似てるだなんて言われたら、自慢じゃないけど上手くごまかせる自信がない。
まあさ。よく考えてみればあんな美形軍団と俺には共通の話題もなければ接点もないから、話が弾むわけがないんだけども。
「はいはい、みんな。席に着いてねー」
程なくして本鈴が鳴り、先生が教室にやって来た。
テスト用紙を配る直前まで教科書を広げていたやつも、諦めて答案に向かう。俺はもうとっくの昔に諦めてるからクロスワードパズルを埋めていく要領で、なんとか分かる答えから埋めて行く。
勿論、その穴だらけの穴空きパズルが完成することはないんだけれど。テスト用紙に向かうこと十数分、早くも打ち止めで俺は潔くペンを置いた。そして、机にうなだれ周りを見遣る。
結木さんはクラスでも上位の成績で、余裕で問題を解いたんだろう。俺と同じにおもむろにペンを置いて、そのまま机に突っ伏した。橋本はどうやら少し苦戦しているようで、首を傾げ、僅かに眉間に皺が寄っている。
いくつかの答えをわざと間違えて補習を受けたがる橋本だけど、基本的にはいつもそれなりの成績を取っている。俺と壱人はきっと、平均的な成績なんだと思う。普通一般的な高校なら、それなりの成績が取れるレベルの。
生憎、都内でも有数の進学校に進学してしまったから授業に着いていくのも大変なだけで、俺も壱人も本当のおバカではないはずなんだけど。
そんなことを考えていてもテスト用紙が埋まることはなく、終了のチャイムで穴空きパズルの解答を提出した俺は一教科目で早くも冬休みが潰れたことを確信してしまったのだった。
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