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 終わった……、いろんな意味で。 「はいはい、ペン置いてね。後ろから(すみ)やかに答案用紙を集めてー」  ちょっと癖の強いキャラ、国語のあずさ先生の合図で穴空きパズルは回収されて行った。これがあと数回繰り返され、それがまだ数日続く。 「米倉、どうだった?」  やけにさっぱりした顔の橋本は、余裕をかましてそんなことを聞いてくる。 「聞くな」  お前と違って全教科追試決定だっつーの。そう言いたいのをぐっと堪えて、男らしく一刀両断してみせた。  橋本はスポーツ推薦枠でうちに入学した割りにそこそこの成績で、橋本にとっての天敵の英語以外は赤点を取ることはない。それに比べて俺はときたら……、つか、悔しいから比べてやるかっ。  俺は心の中でそう独りごち、机にうなだれた。過ぎたことは忘れて次に向かえばいいんだろうけど、いまさら教科書を広げてもどうなるものでもない。  多分、隣のクラスでもそうだ。きっと壱人は、水上と村上と馬鹿笑いしているだろう。そんなことを思いながら結木さんの方を見遣ると、なんと、ベーコンレタスな同人誌を読み(ふけ)っていた。  結局一日目はそんなふうに終わり、数日間同じことの繰り返しでテスト期間は終わった。まあ、今回の試験は中間テストだし一縷(いちる)の望みは期末に(たく)すとして、後は学園祭や修学旅行の楽しいイベントが待っている。  いや、別に楽しみにしてるわけじゃないけどテストよりは遥かにマシかな、と。自分にそんな言い訳をしつつ、カレンダーの日付を丸で囲んだ。  うちの学校は共学校らしく学園祭はそれなりに華やかで、開催期間中のカップル成立率は半端ない。ミスコンに女装、男装のコンテストまであって、毎年かなりの賑わいを見せる。  体育祭は内輪でやるも文化祭の方は一般に公開していて、近所の女子校や男子校、他校から遊びに来る生徒も多かった。 「ミスコンの優勝は今年は結木かもな」 「わたし?」 「水瀬先輩が卒業したしな」  水瀬先輩はミスコン参加の常連で、三年間優勝し続けて去年卒業して行った。例の壱人が追い掛けたとの疑惑がある同じ中学の先輩で、そう言った壱人はしまったとでも言いたそうななんとも気まずい表情(かお)をする。 「それより泉ちん。裏ミスにエントリーしない?」 「は?」 「却下」  俺より先に壱人が結木さんに先制攻撃をかけた。裏ミスとは女装男子のミスコンのことで、男装版の方は裏コンと呼ばれている。

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