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「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
なとなくお互いに照れ臭いまま食事を終え、風呂に入って自室に戻った。どうやら母さんは当時、仲が良かった4人でクラス会の会場となったホテルのスイートルームに宿泊するらしく、その日は帰って来ることはなかった。
壱人は俺の母さんが留守なのを自分の母親、つまりはおばさんから聞いたらしく、その夜は俺の部屋に来ることはなかった。
「それにしても……」
見事に当たりくじを引いてしまった自分を思い出し、思わず苦笑う。
「んー……」
まあ、俺が出場したところで参加賞が関の山で、別に気にすることはないんだけど。結木さんの男装と村上の女装を思うと、頬がだらし無く緩んだ。
どちらも想像しやすい美形だけど、その姿で二人でいても違和感はないんじゃないかな。いかんせん村上のほうがちょっとだけ背が高いけど、結木さんも女子の中では長身のほうだ。
「裏ミスコン、か」
つまりは女装コンテスト。一抹の不安を感じないでもないが、俺はひそかに楽しみにしていた。
ベッド脇に放置していた携帯を確認すると、水上かメッセージを数件、受信していた。内容は確認するまでもなくベーコンレタスな内容で、新しいサイトを発掘したらしかった。
水上が最近はまっているのは王道の全寮制の学園もので、特に平凡が主人公のいわゆる脇役主人公ものが好きなんだそうだ。
正直、壱人と付き合うようになってから、平凡主人公の幼なじみや親友の設定のものは共感できるようになった。だけど、全寮制の学園ものはファンタジーすぎて感情移入ができない。
別に主人公に感情移入なんてしなくても楽しめるんだけど、最近は感情移入したほうがドキドキして萌えられたりする。そもそもうちの高校は一応は進学校だけど、クラスの半分は女子生徒だ。おまけに俺と壱人以外に同性カップルを知らないし、そういった現場に出くわしたこともない。
何度か三年生の先輩カップルがイチャイチャしている現場に遭遇したことがあるけど、普通に男女のカップルだった。それはそれで興奮したけど。
「……あふっ」
軽い睡魔に襲われてあくびを一つ。今夜はいつもより少し早いけど、もう寝てしまおう。
明日からは美男美女コンテストの準備も始まって、今より忙しくなるだろう。クラス単位での準備だから、壱人とあまり会えなくなるのが少しだけ淋しかった。
だけど、やっぱ、楽しみなんだよな。学園祭って。無条件にお祭りは好きだ。
よっぽど疲れていたのか寝間着がわりのTシャツと半パンに着替えて布団に入ると、すぐに眠ってしまった。
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