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一目惚れ①

「あっ、お兄ちゃんだ!  もしかして今日、帰ってくるの?」  久々に実家に帰省途中の電車内で、妹に声を掛けられた。  帰省なんて言いながら俺が住んでいるマンションはここから二駅しか離れていない場所にあるから、月に一、二度家族に顔を見せるようにしているだけの話なのだけれど。  妹の藍は俺より三つ年下の、大学四年生。  そして俺とコイツは、とてもよく似た顔立ちをしている。  そのため子供の頃は入れ替わっても、誰も気付かなかったくらいだ。  だから友達や大人を騙して、悪戯をしたりもした。  残念ながら俺の身長がそこまで伸びなかったという事もあり、現在も一目見ただけで兄妹だと、知らない者にも気付かれる程良く似ているらしい。 「うん、仕事が終わって今から帰るとこ。一緒に、帰ろっか?」  俺の言葉に、笑顔で大きく頷く藍。  小さい頃から俺によく懐いてくれているのはありがたいが、コイツは少しブラコンの気があるのかもしれない。  今彼女が付き合っている男の事も良く知っているが、自惚れなどではなく、どことなく俺に見た目や雰囲気が似ている気がする。  ......とはいえ結果として彼女とその恋人も似ているという事になるワケだから、もしかしたら単なるナルシストなのかも知れないけれど。 「えっと......じゃあ僕は、次の駅で降りますね。  藍さん、明日また大学で」  横から割り込んできた声で、ようやく彼女がひとりでは無かったのだと気付いた。 「ごめん!連れが居たの、知らなくて」  電車内はほぼ満員に近いすし詰め状態だったから、本当にまるで彼の存在に気付いていなかった。  だから慌ててこちらが引こうとしたのにその男は穏やかな微笑を浮かべ、小さく首を横に振った。

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