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第1話
明け方にやっと依頼のイラストが完成し、そのまま仕事の龍を送り出す。
今日は朝早くからMVの撮影があるらしく、帰りは夕方頃になると言っていた。
一眠りしたら食事の買い出しに行こうと考えながら、ベッドに潜り込み瞼を閉じた。
それから二時間も経たないうちに、目が覚めてしまった。
身体は熱いのに、悪寒で震えが止まらない。
仕事が落ち着いて気が抜けたせいか、風邪を引いてしまったようだ。
「ごほ..っけほ..」
熱を計って薬を飲んだ方が良いのは分かっているけれど、怠くてとても動けそうにない。
これ以上もっと辛くなる前に、もう一度眠ってしまおう。
きっと寝不足なのも原因の一つだと思い、再び眠りに就いた。
「ゔ..っ」
二度目の目覚めは、強い吐き気によって訪れた。
トイレに行こうにも眩暈が酷く、立つどころか起き上がることすら出来ない。
きつく唇を結び両手で口元を押さえてみたけれど、波が去ってくれる気配はない。
なんとか近くにあったゴミ箱を引き寄せ、顔を突っ込むようにして胃の中身を吐き出した。
「うえぇ..っげほ..!」
次々と込み上げてくる吐瀉物に息を詰まらせ、苦しさから生理的な涙が溢れてくるがそれを拭う余裕はない。
暫くこの状態が続き胃液しか出なくなったところで、漸く吐き気が治まって乱れた呼吸を整える。
そこで疲れがピークに達し、そのまま深い眠りへと落ちていった。
「ぐ..っ」
三時間ほど眠った頃、強烈な吐き気を感じて飛び起きた。
今にも吐いてしまいそうなのに、片付ける間もなく眠ってしまったせいでゴミ箱はもう使えない。
這うようにベッドを抜け出してトイレに入り、ドアを閉める余裕もなく便器を抱え込む。
「おえぇ..っは..げほ..!」
胃液すら吐き尽くしてしまったのか、えずくだけで何も出てこない。
無理に動いたこともあり、目の奥がチカチカして更なる吐き気を誘う。
頭が朦朧としていて、もう何も考えられない。
「..た、す..け..て..」
貧血を起こし、視界が暗闇に包まれていく。
吸い込まれるように身体が後ろに傾き、バタン
と鈍い音を立てて意識を失った。
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