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第1話
カーテンの隙間から差し込む日射しの眩しさに目が覚め、隣で気持ち良さそうに寝息を立てる要さんの額へ挨拶代わりにそっと唇を落とす。
1年経った今でも、この無防備な寝顔を見る度、同棲していることを改めて実感し嬉しく思う。
「可愛すぎなんだよ..」
このまま寝込みを襲ってしまいたい衝動を抑え、起こさないよう慎重にベッドから抜け出して着替えもそこそこにキッチンへと向かった。
「トーストと目玉焼き、後はウインナーでも焼くか。」
冷蔵庫の中を漁りながら朝食のメニューを決めていく。
要さんのような凝った料理はとても出来ないけれど、簡単な朝食程度なら作ってあげられる。
少しでも喜んでくれたら良いな、と思いながら急いで準備に取り掛かった。
色違いで買ったお揃いのマグカップに丁度コーヒーを淹れ終えたタイミングで、まだパジャマを着たままの要さんが大きな欠伸を溢しながら起きてきた。
寝癖で髪が大変なことになってしまっているけれど、それもまた愛おしい。
「おはようございます。」
「ふわぁ..おはよ。あれ、良い匂いがするー。」
「あの、珍しく早く起きれたので朝食を作ってみたんですけど..」
「わ、嬉しいなぁ。ありがとう。顔洗ってくるね。」
寝惚け眼でふにゃりと笑い、パタパタと小走りで洗面所に向かう後ろ姿をこっそり目で追う。
年齢も身長も自分より高い同性を、こんなにも可愛いと感じる日が来るなんて、要さんと出逢うまで思いもしなかった。
「お待たせー。食べよっか。」
「はい。」
リビングに戻ってきて、既に座っていた俺の目の前に要さんも座る。
もうすっかり眠気は消え去ったようだ。
パチンと軽い音を立て、二人揃って手を合わせる。
「「いただきます。」」
丁寧にトーストにバターを塗る仕草も、綺麗な箸使いも好きだ。
いつも見ている筈なのに、つい見惚れてしまう。
ぼんやり眺めている間に要さんは、もう半分以上食べ終わっていた。
それに気付き、慌てて残りを頬張った。
「ごちそうさま。美味しかった!」
「良かったです。片付けてきますね。」
「ありがとう。それじゃあ、僕は洗濯しちゃうね。」
「わかりました。お願いします。」
二人分の食器を持って再びキッチンに向かい、洗い物を始める。
綺麗に完食された皿を見て、美味しかったと笑う姿を思い出し、自然と頬が緩んでいく。
「..喜んでもらえたみたいで良かった。」
食器だけなので片付けは思ったよりも早く終わり戻ってソファーに腰掛けると、すぐに洗濯機を回し終えた要さんも戻ってきた。
「そういえば、休み被るの久しぶりですね。何処か行きます?」
「んー、家でのんびりしたいかも。あ、でもスーパーは行きたい!」
「じゃあ、スーパー行くついでに天気も良いので散歩しましょうよ。」
「わ、良いね!プチデートだ!」
上機嫌な笑みを浮かべて俺の膝の上に横になる要さんの頭をくしゃりと撫でる。
暫くこのまま話をしていると、洗濯終了を知らせる音がリビングまでハッキリと聞こえてきた。
「あ、洗濯終わった。干してくるね。」
「手伝います。」
「よし、それじゃあ二人でパパッと終わらせて出掛けようか。」
「はい。洗濯物、持ってきますね。」
カゴに洗濯物を詰め込んで持っていくと、既にハンガーや洗濯バサミが用意されていた。
そんなに広くないベランダに二人で出て、一枚一枚丁寧に干していく。
昨日の分だけだったので、あっという間に全て干し終えることが出来た。
「んー、本当に良い天気。」
「暖かくて気持ち良いですね。」
「出掛ける準備しようか。」
「そうですね。」
他愛もない会話をしながらリビングに戻り、小物ケースからヘアゴムを1本取り出して髪を簡単に纏める。
それから適当に上着を羽織り要さんを見ると、色とりどりのカーディガンを並べ何を着ようか迷っていた。
俺と違って服へのこだわりが強く、出掛ける前はよくこうして頭を悩ませている。
「その赤いやつ可愛いですね。」
「良い色だよね。これにしようかなぁ。」
「はい、似合うと思います。」
「ふふ、決めた。お待たせ。」
少し嬉しそうに要さんは赤いカーディガンを羽織ってから、トートバッグを肩に掛けて「行こっか。」と小さく笑った。
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