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第3話

全て終えて寝室に戻ってくると、薬が効いたようで陽輝は穏やかに眠っていた。 それでもまだ額は熱く、そっと冷えピタを貼る。 暫く寝顔を見ていたら急激な眠気が襲ってきて、釣られるようにすぐに眠りに就いた。 「げほッごほ..!ひゅ..っう..」 「..っ陽輝!」 「かは..ったす、け..ッげほ..っは、ひっ..」 「聞こえる?息、吐いて!」 それから2時間ほど眠った頃、激しく咳き込む声で目を覚ますと、陽輝が真っ赤な顔をして過呼吸を起こしていた。 朦朧としていて、焦点が定まっていない。 慌てて上体を抱き起こし、声を掛けながら洗面器に被せておいたビニール袋を取りそれを片手で口元に当て、もう片手で背を軽くトントンと正しい呼吸のリズムで叩く。 「ひ、ぐ..ッおえぇ..!」 「ゆっくり、ゆっくりね。」 「げほ、ごぼ..ッは、あ..っふ..ぅ..」 「そうそう、上手だよ。」 突然ごぽりと喉奥から嫌な音がした刹那、袋の中へビチャビチャと胃の内容物が吐き出した。 酷い咳と息苦しさに、嘔吐中枢が刺激されてしまったのだろう。 大粒の涙を溢しながら縋ってくる姿があまりに可哀想で、思わず目を逸らしてしまいそうになる。 「は..っはぁ..も、へい..き..」 「良かった、落ち着いて。」 「..まひ、ろ..疲れ、て..る、のに..め、わく..掛け..て..ごめ、ん..もう、休んで..?」 「..っこんな時くらい、自分の心配しなよ!バカ!」 ひとしきり吐くと次第に呼吸が整い始め、発作も治まったようだった。 辛いだろうと思い、すぐに寝かせて毛布を掛け直す。 前髪を避けるように頭を撫でると、その手を掴まれ弱々しい掠れた声で俺を気遣い心配した。 いつだって陽輝は俺のことを優先的に想い考える。 それが嬉しいときもあるけれど、今はせめて自分のことを一番に考え頼って欲しかった。 「..今度また倒れたり、過呼吸を起こすまで我慢したら許さないからな。」 「ごめ、ん..も、しな..い..」 「よし!じゃあ、寝ようか。」 「..ん、あり..が、と..な..」 隣に寝転び抱き締めると、陽輝は安堵したようにスヤスヤと腕の中で寝息を立て始めた。 ーーー早く、元気になってね。 そんな願いを込めて、額にそっと口付けを落とした。

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