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第2話

夜道を照らす提灯の明かりや、スピーカーから流れる音の割れた祭囃子が、何処と無く気持ちを昂らせる。 賑わっているが大規模な祭りではない為、思っていたよりも人が少ない。 これなら楽に見て回っていけそうだ。 「早く早く!」 「ちょっ、もう少しゆっくり..!」 履き慣れない雪駄によろめく俺の手を引いて、屋台にキラキラと目を輝かせている姿はまるで子供みたいだ。 それなのに、チラリと見える項が妙に色っぽい。 心なしか行き交う人々が真尋のことを見ているような気がする。 嗚呼、今すぐキスして俺のものだって言いふらしたい。 「いっ、て..何かあったのか..?」 「お面屋!懐かしくない?」 「ああ、子供の頃に駄々こねて買ってもらったことあるわ。」 「ふはっ、ちょっと見てみたいかも。」 不意に立ち止まられたことに対応しきれず、ドンっと背中に突っ込む。 その際に後頭部にぶつけた鼻を押さえながら何事かと問うと、真尋はお面屋の方を向いて屈託のない笑みを浮かべた。 母親にヒーローのやつが欲しいと我が儘を言って買ってもらったことを思い出す。 ぼんやりと幼い頃の記憶が蘇り、懐かしい気持ちになった。 「お面つけたい!陽輝はそうだな..あの黒いキツネのやつとか似合いそう!」 「..じゃあ、真尋は隣の白いキツネな。」 まさか付けるなんて言い出すとは思わなかったけれど、可愛さに免じて今日は付き合ってあげることにしよう。 多少の恥じらいはあるものの、お揃いなら悪くないような気がした。 「動かないで。」 「え?」 「うん、似合ってる。」 「ありがとう!陽輝も似合ってるよ!」 厳つい店員のオジサンから面を二つ受け取り、そのまま真尋の頭に付ける。 想像以上に似合っていて、自然と頬が緩んでしまう。 同時に、誰にも見せたくないという独占欲が沸き上がった。 こんなの絶対に皆が好きになってしまうに決まってる。 急に不安になって、ぎゅっと強く手を握った。 「何処に行きたい?食べたい物はあるのか?」 「唐揚げと焼きそばとお好み焼き!それからリンゴ飴とかき氷!射的も良いなぁ!」 「そんなに食べられないだろ。」 「二人でなら食べられるよ!ね?」 欲張りで愛くるしい真尋の要望に応える為、ゆっくりと歩き出した。

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