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第2話
朝から体調が優れなかったけれど、今日は仕事の資料を取りに1週間ぶりに外へ出なくてはならなかった。
休日なだけあって、平日より少し人が多いように感じる。
人酔いで頭がクラクラし始め、歩き続けることが出来なくなり道の隅に座り込んだ。
「大丈夫..え、理久?栗原理久だよな?」
「は、ると..?なんで..?..うッ..」
「ちょっ、大丈夫か!気持ち悪い?」
「っご、めん..」
心配して声を掛けてきたのは、此処に居るはずのない晴斗だった。
口元を押さえて壁に寄り掛かった僕の背を擦ろうとしてくれた手を振り払い、震える身体を抱くようにして蹲る。
好きだった彼の手にさえ恐怖心が湧き上がり、ボロボロと涙が溢れ落ちていく。
「ごめ..っごめんね..僕..っ穢れて、るから..だから..触ら、ないで..っげほ..ひゅ..ッ」
「なに言ってんだよ。とりあえず落ち着けって。な?」
「はぁ..っは..げほ..ッごほ..!!」
ダラダラと冷や汗を流しながら過呼吸を起こしている僕を、彼が困った顔で見ている。
何度も何度も謝りながら力の入らない身体を冷たい地面に預け、そのまま意識が途絶えた。
目を覚まして最初に視界に映ったのは真っ青な空だった。
どうやら意識を飛ばしていた時間はそう長くないらしい。
後頭部に感じる生暖かさに驚いて飛び起きると、彼も同じく驚いた表情を浮かべた。
それからすぐに彼は安堵のため息を漏らし微笑んだ。
「落ち着いたみたいだな。」
「うん、ありがとう。」
「送ってやるから今日は帰りなよ。まだ顔色悪いし。」
「..ん。」
出版社に連絡して行けないことを伝え、一緒に家へと向かった。
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