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第12話
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俺はしばらくの間、衝撃が大きすぎて何も言えず、ただ黙って田崎を見ていた。田崎は自分が言いたいことを全部言ったからなのか、それとも3週間分を発散したからなのか、すごくスッキリとした顔をしている。
――おまえはスッキリしたかもしれないけど、俺はまだスッキリしてないんだ。
そう思って、気になっていた件を口にした。
「あのさ、一つ質問があるんだけど、なんでいつも俺の家でシャワー浴びて帰らなかったんだ?」
「シャワー?」
「……その、普通、ヤッた後ってシャワー浴びない? でもおまえ浴びずに帰ってたじゃないか」
「そんなの湯冷めするからに決まってるだろうが」
「はあ?」
「おまえな、俺に風邪を引かせたいのか?」
「いや……そんなつもりじゃなかったんだけど……っていうか、そんな理由?!」
――なんだよ、いろいろ邪推して損したじゃねえか!
「そんな理由とか軽々しく言わないで欲しいな。風邪をこじらせて肺炎になって死んだらどうするんだよ」
「……いや、まあ、そういうこともあるかもしれないけど」
「なんだ、おまえ、もしかしてヤッた後で俺とシャワーを一緒に浴びられなくて寂しかったのか?」
「えっ!? いや、違う、そういうことじゃなくて……」
「なんだよ、それならそうと言ってくれたら良かったのに。寂しがり屋さんだなあ。……今度からは思う存分、一緒にシャワーでも風呂でも好きなだけ入れるぞ? だって俺、ここからどこにも帰る必要ないんだもん」
「いやっ、だから、なんでお前がここに住むこと前提で話が進んでるんだよ!?」
「え? 俺、もうおまえの許可を得た気でいたんだけど。違うの?」
あいつはまるで迷子の小犬みたいな目で俺を見つめた。
――だからっ、なんでっ、そんな目で俺を見るんだよっ!?
「……俺、出て行った方がいい?」
「いや……いいよ」
「え? なに?」
「いいってば。次の家見つかるまで、ここにいていいから」
「ありがとう、桜庭」
もう……俺、どうしてこいつの言うこと断れないんだろ。しかも、何故かキュンとかしちゃったじゃないか……くそ、これだからイケメンは困るんだよ。
「じゃ、早速後で一緒にシャワー浴びようか」
「え? 後で……? 今じゃなくて……?」
「3週間分溜まってるって言っただろ?」
そう言って、田崎は俺を押し倒してきた。
「は……はあああ!? ま、まだヤル気かよ!?」
「当然だろ」
「おっ、おまえは休みかもしれないけど、俺は明日会社なんだぞ!?」
「……お客様のご要望にお応えできるよう、最善の努力は致しますが、結果についての保証は致しかねますので、ご了承下さい」
あいつはものすごく格好いい営業用スマイルを浮かべると、俺を見下ろしてそう言った。
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