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ネコと猫_1
男が好きだと自覚したのは高校生の時だった。
初めて付き合ったのは大学一年の夏。
目の大きい茶髪の同級生だった。
そこで分かったのは自分が抱かれる側より抱く側であると言うこと。
まあ、身長百八十センチ、筋肉もそこそこ付いている俺を抱こうなどそもそも論として誰も思わないだろうが……。
付き合って半年も経たないうちに別れてしまったのは、互いに深く想い合えないと感じたからだ。
身体の相性は良かったけどな。
それなら付き合わずとも互いに楽しめればいいのでは、とそういう結論に至った。
それからは人と付き合うなどと言う気は起きず、一夜限りの心地良さに身を任せるばかりだ。
社会人になってからは尚更で、週末にはそういう奴らが集まるバーに通い、相手を探すことが多かった。
この世に生まれて二十九年経つが男を抱くことはあれど、抱かれたことなんて一度もない。
そう、今この瞬間までは……。
「ふふふ、可愛い」
「んっ…………やめ、離、せ……っ……」
「キスだけでそんな顔させてるのに、離せるわけない」
不本意だが簡単に状況説明しよう。
俺は今、現在進行形で男に襲われている。
「お前っ……ネコ、好きだっつっただろ!」
「ええ、言いましたよ。猫は大好きです、にゃんにゃん」
「そっちじゃ…………っ……ねぇっ………んあ!」
「あれ、胸も感じるんですか?やっぱ才能あり、ですね」
どうしてこんなことになったのか?
そんなこと俺が知りたい!
「僕ね、先輩みたいに気が強くて、いかにもタチって感じの人をグズグズに抱き潰すの好きなんですよ」
ぺろりと唇に舌を這わせる仕草は無駄な色気を放つ。
「くそっ……も、やめ……」
「まさか。これからが楽しいところですよ?」
事の始まりは少し前に遡る。
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