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第28話

 透の隣で、光希は穏やかな寝息を立てている。あれだけ搾り取られた後だ。一通りの行為が終わった後、一言「もう限界……」とだけ呟いて、気絶するように眠りに落ちた。  健やかな顔で眠っていたので、無理をさせたわけではないようだ。  あどけない寝顔を見つめた後で、透は後片付け始めた。汚れた身体を拭き、ぐしゃぐしゃになったシーツは、彼を起こさないようにそっと回収し、新しいものに代える。  特別甲斐甲斐しくしているという自覚は彼にはない。抱いた人に対して、いつもしていることだから。  E地区は、生まれた時から西田透の家だった。親がこの地区で店を開いていたからだ。  両親が経営している大人の玩具専門店は、想像以上に繁盛しているようで、最初は一階建ての小さな店が、移転を重ねて今ではビル丸ごと一棟までに成長していた。  ネオンが煌めき、全ての欲望を飲み込む夜の街。  子どもは入れないけれど、そこに生まれてはいけないという法はない。というよりは、誰もそんな場所で子育てをする夫婦がいるとは考えなかったのだろう。  その結果、彼は生まれてこの方、そのネオンの明かりを眩しいと思ったことはない。三文芝居のような愛憎劇も、粘ついた性欲も、幼い頃から全部透の傍にあったものだ。  人によっては、同情と軽蔑の対象になるのかもしれない。親はどんな教育をしているんだと憤りを感じることもあるだろう。  しかし、透は自分を惨めだとも哀れだとも感じたことはないし、E地区で透を育てる両親を憎らしいとも恨めしいとも思わない。

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