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なんとも下世話な感想で自分でも悲しくなるけれど、勃起しないよう耐えたおれは、えらいと思う。
お風呂の中でエッチなムードになるのは、なんとなくもったいない気がした。
この時間は、純粋な幸福として心に刻んでおきたかったのだけど、藤堂くんはいつもどおり、すぐにおれの気持ちを察してくれた。
おれの頭をもこもこに泡立てて、おかしそうに笑うのが、愛しいしうれしいし、失くしたくないなと思う。
でも、そう思えば思うほどに、こんな風に好きなひとと自宅の風呂でじゃれあうなんて、最初で最後かもしれないな……なんてことが頭をよぎったりもして。
「はー、さっぱりした。やたらはしゃいでごめん」
「おれも楽しかった。水鉄砲買っておけばよかったと思ったくらい」
藤堂くんは、頭を拭いていたタオルを肩に掛けると、モモンガのケージに手をかけ、カコンと扉を開けたり。
「だいきちー。ほら、出ておいで」
袋の中からひょこっと顔を出しただいきちは、藤堂くんの手の中にすぽっとおさまった。
そっとケージから出すと、口を開いた藤堂くんの説明を待たず、だいきちはぴょんと飛んだ。
「うわっ! すごっ、けっこう勢いよく飛ぶんだね」
「ちょっと待っててね、ふみも一瞬で仲良くなれるスーパーアイテムがあるから」
藤堂くんはがさごそとかばんを漁ると、小さなジップ袋を取り出した。
中には指先より小さなマシュマロ。
「これ、だいきちが好きなおやつなんだ。人間のと同じ感じで甘い」
好奇心で食べてみたらおいしかった、とのこと。
マシュマロを指先でつまんでみると、動きを察知したのか、だいきちがひゅうっと飛んできて、藤堂くんの手に止まった。
おれが慎重に差し出す……と、だいきちは器用に両手で掴んで、もちもちしながら食べた。
「か、わいー……」
「動物がもの食べてるのを見るのは癒されるよね」
3粒あげたら、心を許してくれたらしい。
だいきちはおれの手のひらに乗ってきて、もぞもぞと小さな体を擦りつけてきた。
「人懐っこいね」
「モモンガは割と社交的なペットだけど、だいきちは特に甘えん坊だと思う。慣れると、俺の指にしがみついたまま寝る」
すうすうと眠るだいきちと、起こさないようにじっと見ている藤堂くんを思い浮かべると、胸の奥がくすぐったい。
そんなことを思いながらぼーっとだいきちを眺めていると、藤堂くんがくすっと笑って言った。
「じゃあ、そろそろケージに戻すね。だいきち、おうちに帰るよ」
藤堂くんに言われたとおり、手をケージの中に入れると、だいきちは寝袋に飛び移って入っていった。
ケージを閉めて、藤堂くんがひと言。
「写真いっぱい盗撮したから、あとで送るね」
「えっ!? いつの間に」
「ふみ、真剣だったから、隙だらけだった。あはは」
藤堂くんは笑いながら、ぎゅうっと抱きしめてきた。
「……ふみのこと可愛がりたいな。いい?」
「ん。おれも、したい」
簡単に勃起してしまったおれのズボンを見て、藤堂くんは、むにむにとおれの頬を揉みながら目を細めた。
「ご飯食べながら勃っちゃうふみも、お風呂で我慢するふみも、誘った瞬間から欲がだだ漏れになるふみも、全部大好き」
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