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28.これ誰につけられた?
その首筋へのぬるりと言う感触に覚えがある気がして、なぜか昨日の試着室での事を思い出した。
あの時何をしてたっけ。
たしか渡されたニットの服の着方が分からなくて猫野に教えてもらうため一緒に試着室に入って、それから……
「〜〜っ!」
あの時もとても恥ずかしい事をされたと思いだしてしまった。
「何思い出したんだ?」
「へ!? いや、何も」
何でもないと言っているのに、先輩の不機嫌そうな顔は変わらない。
だから何でそんなに怒っているんだ。
「何も無かったなら何でこんな所にこんなもん付けてんだ」
「ひぅっ……」
再び首を舐められて体を震わせた。
こんな所と言われても訳が分からなくて震える体のまま先輩に問えばその声も震えていた。
「そもそも……そこに、何があるって、言うんですか……っ!?」
怒られている事もそこを舐められている事もその理由は分からない。だから理由を知るために半ばやけくそ気味に言ったら呆れたような声で返された。
「……なるほどな、お前は何をされたかすら分かってねぇわけだ」
「うわっ! ……わぷっ」
突然抱きかかえられたかと思えばすぐに背後のベッドへ落とされた。
痛くは無いけど乱暴なその態度に恐怖心がわく。
「な、何……先輩……?」
俺の上にのしかかってくる先輩から逃げようとしたが、足を掴まれてまともに動けなかった。
何をする気だと身構えていたら、掴まれていた片足を肩に担がれて中心へと顔が近づいてきたかと思ったら……
「は!? ちょっと何してんですか!!」
ショートパンツから出ていた内ももをべろりと舐められたからたまったもんじゃない。
ホントに何を考えてるんだと先輩の頭を必死で押してもびくともしなくて、そのままぬるりとした感触と共にチゥ……とリップ音が鳴った。
くすぐったい感触に混じってぞわぞわとなんとも言えない感覚が背筋を走りフルリと腰が揺れてしまう。
「も、やだ……やめて……っ」
腰から上だけを持ち上げられた苦しい体勢のままで普段自分でもほとんど触らないような場所に顔を近づけられて、しかもあろう事か口を付けられて泣きそうになってしまう。
イヤイヤと首を振る俺を横目で見下ろしながら際どい場所に更に舌を這わせる先輩は意地が悪すぎると思う。
「他の男にはさせたんだろ? 場所が違うだけじゃねぇか」
「なに……が……?」
俺が問えば、先輩はこれだと俺の体をさらに折り曲げて舐めていた場所を俺の見える場所まで持ってきた。
いつの間にか涙で視界が霞んでいたので手でこすって改めて見たら、内ももに赤い痕がついている。
こんな所どこかにぶつけただろうかと考えていたのが分かったのか、再び先輩が顔を寄せて口づけるから小さな悲鳴を上げてしまった。
「……これで分かるか?」
「だから何が……っ」
これと言われた所にはやはり赤い痕があって、だがそれが二つに増えていたからあれ? と首をかしげた。
「意味が分かったかよ」
「え、え?」
「これと同じもんが首にもあんだけどなぁ?」
おれの足を離した先輩は、今度は自分の腕で俺を閉じ込めるように覆いかぶさってきて首筋に息を吹きかけた。
ぞわぞわとした感覚が再び襲い、そしてそこに同じような痕があるのだとやっと理解する。
確かに、似たようなことを猫野にされた。
だけどまさかこんな痕をつけられているなんて思わないじゃないか。
「で? これ誰に付けられた」
「………友達に……」
「あ? お友達とこんなことするのかよ」
「え? しないんですか?」
「……は?」
「……え?」
え、しないの?
じゃあ何で猫野はあんなことしたんだ?
この世界の友達付き合いに疑問を感じている俺を難しい顔して見ていた先輩は片手で顔を覆ってはぁぁぁ……ととても長いため息を吐いた。
「……そういやお前はそうだった……」
「そうだったって、どういう事ですか?」
「いや……それよりもっと詳しく話聞かせろ」
「はぁ……」
詳しく聞かせろと言うので昨日の楽しかった思い出を先輩に話した。
その際ベッドの上で壁に背をつけて座る先輩の上に横抱きされながら話すはめになったけど、もう今さら抵抗しても無駄だと悟って大人しく座っている。
試着室での事は簡潔に話したかったのだが、先輩はしつこいぐらい細かく聞いてくるもんだから事細かに説明する事になってしまった。
これも新手の嫌がらせだろうか。
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