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29.耳がバレた

  「………とりあえずお前は誰かと二人っきりになるな。たとえ友達でもだ」  話を聞き終えた先輩が俺の太ももを撫でながら言った。 「友達でもですか?」 「あぁ、お前まだダチとの付き合いになれてねぇんだろ? だったら二人っきりになるな。またあんなことされるぞ」 「な、なるほど……気をつけます。じゃあ今日の勉強も図書室で……──」 「俺は良いんだよ」 「いや先輩が一番……──」 「俺は良いんだよ」 「………」  全然良くない……と反論した所で聞いてくれないのは分かっていたので、ささやかな抗議として太ももを撫でる手を『めっ!』って叩いといた。 「じゃあ、そろそろ勉強の続きをしましょう」 「まだすんのか」 「まだ一教科しか終わってませんよ!」  ぶつぶつと文句を言う先輩を置いてベッドから降りる。  次の教科の準備をしていたら後ろからクイッと服を引っ張られてちょっと首がしまってしまい、何事だと振り返ったら先輩が俺のフードを掴んでいた。 「何だこれ………」 「何だって、フードでしょ?」  何言ってんだこの人と思ったが、よく見たら先輩が掴んでいたのはフードじゃなかった。  フードの先にある長いふわふわした物。なんの役にも立たない、それどころか邪魔にしかならない正に無用の長物……ウサ耳だった。 「うわぁあっ!!」  咄嗟に引っ張って先輩の手から奪い取り手の中に隠した。  そういやこんなの付いてた。  昨日取ろうとしたけど新品のルームウェアをボロにするのも忍びなくて結局そのままにしていたが、やはり何とかして取ればよかった。 「……お前ちょっとフードかぶってみろ」  ほらこんな事言い出した! 「……嫌です……」 「何でだよ」 「何ででもです」  目をそらしてフードごと長い耳を掴んでいたら、のそっと先輩が近づいてくるのが分かって焦る。  これは強制的に被せられるやつだと悟り急いで距離をとって叫ぶ。 「先に勉強です! 勉強終わってから!」 「……」  嫌だと言ったところで却下されるのは分かっているのだから精一杯の妥協をした。  嫌だけど、ウサ耳なんて情けない姿を見られるのは非常に嫌なんだけど回避出来ないならしょうがない。 「……なるほど……次のご褒美ってワケだ」 「は?」  威嚇しながら先輩を睨んでいたら何だか勝手に納得したように先輩が大人しくなった。  よく分からないが勉強する為に座って教材と向き合ってくれたので良しとしよう。  胡座をかいた足をポンポンとされたけど無視してテーブルの向かい側で改めて勉強を教えた。  

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