「んぁっ！　せ、んぱいっ……！」 　形を確かめるように性器を包んでいただけだった先輩の大きな手が、裏すじをなぞるように握ってきて鼻にかかった声がもれてしまう。 　キスからは解放されたが下着内の窮屈な中で長い指だけで性器を扱かれ、はしたない声が次々もれてしまいそうでそれならキスで口を塞いでもらっていた方がマシだったかもしれない。 「は、ぁ……んっ」 　何とか声を抑えたくて先輩の胸にすがるように顔をうずめたら、背中にまわしていた腕で髪を梳かれてその優しい刺激にすら過敏に反応してしまった。 「ほら、お前も俺の触れよ……」 「ん、ぇ……？」 　熱に浮かされた頭で先輩の言葉の意味を考えている間に、先輩は俺の性器から手を離し、自分の性器をボロリと出したものだから、それを直視してしまった俺は分かりやすく狼狽えた。 「うわ……っ、あ、あ、あのっ！」 「ほら」 「………っ！」 　ワタワタする俺の手を取り先輩の性器へと導かれて強制的に握らせられた。 　俺の手が触れると、硬くなったそれがピクンと脈打つ。 「はっ……、お前の手やわらけぇな……」 　戸惑う俺にもお構いなしに俺の手ごと自分のものを扱く先輩の声に熱がこもってきて、俺まで変な気分になってしまう。 「……そうやって俺のも気持ちよくしてくれよ？」 　そう言って手を離され、今度は俺の性器をズボンの上から出して握られた。 「ん……っ」 「おら、手ぇ止まってんぞ？　抜き合いなんだ……俺のイかせられるまで終わらねぇからな」 「そ、んな……あんっ！」 　そんな無茶なと言いたくても口を開けば変な声が出てしまっていたたまれない。 　恥ずかしくて、でも終わらせる為に申し訳程度に手を動かしたが、先輩の手はただただ快感を与える為の動きで、呼吸と共に出したくもない声が出てしまう。 　口を閉ざすために再び先輩の胸にすがるとまた優しく髪を梳かれて、心地よくて気持ちよくて、羞恥心がだんだん薄れてくる。 　羞恥心が薄れれば、大胆に手を動かすことが出来るようになり、先輩の息が荒くなって気持ちがいいのは俺だけではないのだと安堵した。 「ひゃ……っ、せんぱ、首、舐めないで……っ！」 　俺の髪を梳いていた手が首にかかる髪を後ろにまとめ、あらわになった首筋を舐められた。 　ねっとりと生き物のように這う舌の感覚に更に熱が上がってしまう。 　もう自分が何をしているのか分からなり、手の動きが疎かになってしまうが、構わず執拗に攻められて、とうとう先輩の手の中に熱を吐き出してしまった。 「は、はぁ、は……っ」 　抱きしめられている力強い腕に体を預け、乱れた呼吸を繰り返す。 　すると、ゆっくり先輩の体が離れキスを落とされる。 　ついばむようなキスを何度も繰り返され、まともに抵抗もせずに受け止めていたらそのままゆっくりと床へ倒された。 　達した余韻と先輩からのキスでふわふわしている頭では今から何をされるのかなんて考える余裕は無くて、ぼーっと成り行きを見ていたら俺の性器に自分のモノを押し付けてきた。 「ぁ……え、待って、なに……？」 　一度達して敏感になっている俺のそれに先輩の硬くそそり勃つ性器を擦り付けられて体が跳ねる。 　思わず離していた手を再び取られて両手で二本を包むように持たされた。 「そのやわらけぇ手でしっかり握ってろよ」 　それを上から俺の腹に固定するように押さえられて、先輩の腰が動いた。 「ひぁっ、待ってこれっ、あっ、やぁっ！」 　俺の手の中でズチュズチュと動かされれば当然俺のモノもこすれてしまう。 　裏すじや玉を昂ぶった熱で擦られて自分のそれにもまた熱が集まりだす。 　押し倒されて、足を広げられて、その中心で腰を動かされて……こんなの、まるで男女の行為みたいじゃないか。 「や、だぁ……っ」 　考えた途端、自分がとんでもなくイケナイコトをしているような気分になって、現実逃避をするように強くまぶたを閉じると火照った頬にポロポロと涙が滑り落ちた。 「あんまっ、可愛い顔すんな……」 　切羽詰まったような声と共に流れる涙を舐め取られた。 「ひっ……ん！」 　それにより先輩の荒い息遣いを感じてしまい、まるで獰猛な野獣に食べられているような感覚に襲われて身を震わせた。 　先輩の性器がドクンと脈打つ。 　どんどん荒くなる腰使いに追い詰められていく。 「っ……、出すぞっ……」 「は……、おれも……んっ、でる……！」 　大きな体で覆いかぶさるように抱きしめられながら、荒い呼吸が混じり合い、二人で達した。 　※　※　※ 　どちらとも言えない体液で汚してしまったパーカーをジャージに着替えた俺は、再び先輩の膝の上。 　会話も無く、ただ背後から先輩に抱きしめられているこの状況をそんなに嫌だと思わないのは慣れてきた証拠だろうか。 「……先輩、そろそろ戻らないと……」 「ん？　あぁ……」 　返事をした先輩だったが、腕の力を弱める事なく俺の肩に顔を埋めたままなのはどういう事だろう。 　とは言え俺も気だるい体を先輩の胸にあずけたままなので人の事は言えないが。 　随分と濃い一日だったと思う。 　勉強して、何度もキスされて、初めての食堂に感動して、ちょっと落ち込んで、また恥ずかしい事をされて……。 　友達らしい事をしているような、なんだか違うような、自分だけでは処理しきれない情報がいっぱいで考えるのもだんだん疲れてきた。 　何も考えずにそのまま流されてしまおうか、なんて考えて、まぁそう言うわけにもいかないよな、と先輩に預けていた体を起こしたら不満げな声が背後から聞こえた。 「まだ良いじゃねえか」 「駄目ですよ。同室の時間は決まってるでしょ？　それに俺も自分の勉強したいし。何もせずに黙って見てる事できます？」 「まかせろ」 「無理ですね帰ってください」 　あれだけ散々触っておいてどの口が言うか。 　立ち上がって先輩の腕を引けば渋々だが帰る準備をしてくれた。 「ちゃんと復習してくださいね」 「気が向いたらな」 「してくださいね？」 「………」 　ドアの外まで見送って、たぶんしないだろうなと言う約束をして、最後に触れるだけのキスをされて先輩は帰って行った。 　最後にキスをする時に、俺の尻を揉んだのは気のせいでは無い。足早に去っていったのは俺に怒られる前に逃げたのだろう。 　怒られると分かってる事をするんじゃない。