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10.以心伝心する二人

   しかしまぁ目立つ目立つ。  そりゃそうだ。女装メイドが三人揃って歩いていれば目立って当たり前だろう。  特に体のでかい猫野は注目の的だった。ピチピチのメイド服のミニスカートからスポーツマンらしい立派な足を惜しげもなくさらし、おかめみたいなメイクの猫野は最強のオカマみたいだ。  おかげで周りがざわつくが、道を開けて視線をそらしてくれるので助かっている。  今の猫野に敵う人はいないかもしれない。 「まずは何か食おう。腹減ってさー」  猫野の提案で出店をしているエリアへ向かう。  たこ焼きや綿菓子の他にヨーヨーすくいや射的まであって、まるで縁日のお祭りのようだ。  そんな楽しげな雰囲気の中を友人と回れる幸せを噛み締めながら何をしようかキョロキョロしていたら夢野から笑われてしまった。 「ルイそんなにキョロキョロしてたらはぐれちゃうよ。僕の腕に捕まってて」 「うん、ありがとアリス。お祭りってあんまり来たことないから色々気になっちゃって」  子供のように気遣われたのが恥ずかしくてはにかみながら差し出された腕を軽く掴んだ。 「ルイちゃん俺もはぐれないように掴んでていいよ〜」 「チエは見失いようがないから良いよ」 「……」 「どんまいチエ……」  隣で何故か猫野がひどく落ち込んでしまったので声をかけようとしたら、そっと肩を抱かれた。  そうか、自分がはぐれるのが嫌だったのか。  そりゃそうだろう。この格好で一人になるのは俺だって嫌だ。  腕を組んだり肩を組んだりした妙な女装メイドトリオが完成してしまったが、お祭りなので多少の奇行は許してほしい。 「さぁて、何食べる?」 「色々あって迷うね」 「じゃあみんなでシェアしようぜ。その方が色々食べれて良いじゃん」  猫野の提案によりとりあえず店を見て回り各自好きな物を買って三人で分ける事になった。  俺はソースの香りに誘われてたこ焼きの屋台へと列んだ。 「はーいいらっしゃ……ひ、姫っ!?」  店をしている生徒からぎょっとするように見られ俺も驚くが振り向けば猫野と夢野も付いてきていた。  夢野も来ていたのか。一瞬自分が姫と呼ばれたのかと思ってびっくりしたよ。 「二人もたこ焼き買うの?」 「ううん、見てるだけ」 「ルイちゃんが何買うのかなって思ってさ」  そしてまた肩と腕を取られた。これではたこ焼きが受け取れないと思っていたが、かわりに猫野が受け取ってくれた。 「サービスしときましたから姫!」 「あらやだ姫だなんて照れちゃうわぁ」 「お前じゃねぇ!」  たこ焼きを受け取りながら猫野が返事をするがさっそくツッコまれていた。  なるほど、ふざけたふりをしているが日頃からこうやって夢野の盾なり守っているのか。なかなかやるじゃないか猫野。  空いているテーブルを見つけて椅子に座ると猫野はそのまま屋台まで戻って行った。 「アリスは何か買わないで良いの?」 「チエに適当に買ってきてって頼んどいたから大丈夫」  しばらくして戻ってきた猫野の手にはフランクフルトとチョコバナナが握られていて、夢野にチョコバナナを手渡す。 「いいチョイスじゃん」 「当然だろ」  短い言葉を交わして意味深に目配せする二人から仲の良さがうかがえ感心する。俺もいつか以心伝心できるほど仲良くなりたいな。  

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