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じゃんけん
『『じゃんけんぽん』』
『『あいこでしょ』』
さっきから何度もこれの繰り返し。
緊張してるからなのか、予想が当たらない…
何か…手に汗かいてきたし…
俺は、とりあえず一度自分の手を制服のパンツで擦り、汗を拭う。
ふぅ~っと深く息を吐くと、お互いの手だけに集中していた視線を和樹へと向けた。
すると、和樹も同じように俺を見ている。
『次は負けない…』
『僕も…』
緊張していた表情は和らぎ、自然と笑顔になった俺たち。
そして、『『じゃんけんぽん』』っと同時に手を出した。
『決まらないな…』
『うん…』
またあいこ…
勝負がつかない…
悔しそうに唇を噛んでいる和樹を見ていたら、何だかすごく可愛くて…
『俺の好きな人…知りたい?』
そう問いかけていた。
一瞬目を大きくした和樹が、コクリと頷く。
『じゃあ、教えてあげる…。もう一度あいこだったらね』
『わかった…』
俺の言葉に頷くと、『『じゃんけんぽん』』と手を出した。
『あっ…負けちゃった…』
和樹が残念そうに自分の出した手を見つめたまま呟く。
何でそんな顔しているの?
そんなに知りたい…?
俺の好きな人…
『和樹…』
『なに…?』
『何でそんなに残念そうなの?』
『だって…勝てると思ったんだ…』
『俺の好きな人、そんなに知りたいの…?』
『うん…知りたい…』
『どうして?』
『どうしてって…それは…』
困ったように顔を真っ赤にしながら、俯いてしまった和樹…
そんな態度を取られたら、俺…期待しちゃうけど…
もしかしたら和樹も俺のことって…
『ねえ、和樹の負けだよ…』
『うん…』
『俺も知りたいんだけどな。和樹の好きな人。教えてよ…』
覗き込むように言うと、恥ずかしそうに視線を逸らされる。
1つ1つのしぐさが俺の気持ちをくすぐる…
このまま抱きしめたりしたら君はどうなってしまうのかな?
『僕は…』
拳を握りしめながら、震える声で和樹が何か言おうとしてる。
俺は、そのキツく握られている拳を、そっと自分の手で包み込んだ。
『和樹…大丈夫だよ。きっと俺たち同じ気持ちだから…』
『りょう…?』
『和樹は…俺のことどう思ってる? 俺はね、ずっと和樹のことが好きだったんだ。ずっとね…』
『亮太も…? 僕と同じ気持ちなの?』
『和樹の気持ちは?』
『好き…なの…。ずっと…亮太のことが…』
『うん…』
『だからね、ずっとここが苦しくて…』
眉を下げながら左胸を押さえている。
俺も同じように自分の左胸に手を当てた。
俺たち…ずっと二人で言えない気持ちを押さえ込んでいたんだ。
もう、気持ちを隠すことなんてない。
ここが苦しくなることもなくなる。
『大好きだから…。もう苦しくなることもなくなるよ』
『うん…』
和樹が胸に当てている手も握りしめると、俺はゆっくりと顔を近づけて頬にキスをした。
ピクッと身体を震わせた和樹だけど、恥ずかしそうに顔を赤く染めながら俺を見つめてくる。
そして、そっと目を閉じた。
その唇に俺は自分の唇を重ねると、そのまま和樹の身体を包み込んだ。
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