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記憶10

 キスを繰り返す夜。  キスと指だけの行為。  もどかしさと切なさが募る。  でも、あんたに触れられるのが、触れてくれるのが嬉しい。  「なあ、あかんのか」  ボクのモノを弄りながらアイツが呻くように言う。  ボクはアイツの穴に指を入れている。  優しくかき混ぜ、そこを擦る。    「あっ、いい、そこもっと・・・」  アイツの背が反る。    でも、指では足りないことは分かっている。   もう何カ月も、決して禁欲的ではないコイツが、ここに指以外を入れていないことはツラいと思う。  「・・・ごめん。辛いな、あんたが」  抱きしめながらボクは言う。  「挿れてや・・・お願いや・・・」     アイツが指に合わせて腰を振りながら、涙目で言う。  淫らすぎて、出そうになる。  「ごめん・・・」  ボクは歯を食いしばる。  「アホ・・・」  首筋を噛まれた。  痛みさえ甘い。  出来ない、どうしても出来ない。  こんなに好きなのに、好きだから。  苦しい。  ボクだってコイツに挿れたい。   あの暖かい中を味わいたい、擦りたてたい、中でイきたい。  でも、ボクは汚い。  絶対にあかん。  あかんのや。  キスをする。  キスだけは許して欲しい。  口の中を犯す。   本当はボクのモノをここに突っ込みたい。    喉の奥まで入れて犯したい。  汚いボクの欲望。  指であんたに触れることも許して欲しい。  穴を弄りながら、前も扱く。  「一緒にしたらあかん・・・出る・・・」  アイツが喘いだ。    「・・・出してや」  ボクは囁く。  少しでも気持ち良くなって欲しい。  指で追い上げれば、喉をそらせて、アイツはボクの手の中に白濁を吐き出した。  指とキスだけ。  こんなガキくさいセックスとも言えないものじゃコイツは物足りないだろう。  「・・・ボク以外としてもええんやで・・・」  言いたくない言葉を血を吐く思いで口にする。  誰にも触らせなくないのに。  でも、コイツの身体を満足させてやれないのはボクだ。  「マジで言ってるんか、ボケ!」     アイツがキレた。  「お前がいいって言ってるやろが!5人相手でも6人相手でもやヤったりしたわ、どうやったら気持ちいいか知りたくてな、どこででもしたし、誰とでもしたわ!気持ちええだけなんは、もうええんや、お前がええって言ってるやろか、ボケ!」   殴られるかと思った。  「・・・アホが・・・」  殴られる代わりにキスされた。   泣きそうになる。   ボクの汚い欲望。  ボクの汚い身体。    でもコイツはボクがいいと言う。  「・・ ・でも、お前、ちょっとマシになってきとったのに、最近また酷なったな。ちょっと前には口で咥えさせてくれたりするようなったのに」    アイツが拗ねたように言う。    「挿れさせてくれへんのやったら、せめて咥えさせてくれたらええのに」  指で扱かれる。   その指は巧みに動く。  ボクの息は荒くなる。  「なんで、あんた、オレなんかがええんや」  オレはそれがいつも不思議でならない。     「・・・お前の初めて喰ってもうたしなぁ。責任とらな」    アイツは笑った。  「・・・そんな責任とらんでええ」  ボクはこらえられないように呻いた。  ボクももうイきそうだった。  「・・・冗談や。なんでなんかなんでわからんのかな。オレ、お前大事にしとるのに」  微笑まれたら、辛くなる。  知ってる。  初めて会った時から、コイツはボクを大切にしてる。  いまだって。  「ボクはあんたに大事にされるようなヤツやない・・・」    ボクは呟き、呻いた。    アイツの指でイった。  「たくさん出たな」  アイツは笑って、手についたそれを舐めた。  ボクは慌てる。  「あかん、汚い、出すんや!」  ボクは口を無理やり開けさせるが、もうそいつはそれを飲み込んでいた。    「・・・なんてことするんや」  ボクは真っ青になる。  「精液ぐらいで・・・」  アイツは笑うがボクが震えながらアイツを抱き締めたから、身体を固くする。    「お前、どないしたんや、ホンマに・・・」  アイツがボクの背中に手を回す。  「・・・あんたが汚れる。あかん、絶対あかん」  ボクはアイツを抱き締めた。  本当はもう、ボクはコイツに触れたりもしたらあかんのや。  ボクは汚い。  汚い。  アイツは困ったようにボクを抱き締め返した。  「お前、どないしたんや・・・」  アイツは聞く。  ボクは答えない、答えられるわけない。

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