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記憶11

 男がいやらしい笑い声を立てた。 ボクは不快でしかなかった。 「勃ってきたで・・・気持ちいいのか」  耳元で囁かれる声も、気持ち悪い。  勃起したからなんだった言うんだ。  単なる生理現象だ。  「・・・サッサと終われや」  ボクは言う。  感じさせるつもりか、ぐちゃぐちゃ動かされるのがうっとおしい。  コイツは、嫌がるボクとしたいだけだ。  アイツの「恋人」とされているボクとして、優越感に浸りたいゲスだ。  「・・・ごめんな」  ボクは目を閉じ、耐えながらボクが殺した妹に言う。  父親にこういう風に壁に押し付けられされているのを何度も見たことがあった。  ボクは父親が怖くて逃げ出した。  ボクに気付いた妹の目。  絶望の色。  だから、これは罰だ。  ボクは罰を受けなければならないのだ。  アイツの夢が叶ったら、ボクは死んでもいいだろうか。   ボクは汚れている。  こんな汚いものを身体に入れている。  本当はアイツに触れるべきでもないのに。  でも触れずにはいられないほどにボクは浅ましい。  「アイツには突っ込んでるんだろ?・・・突っ込まれる気分はどうだ?」    喉を掴んで囁かれる。  「はよ終われや」  ボクはもうそれしか望まない。  こんなボクを抱いて何が楽しいのか。  背も高いし、身体だってゴツい。  まあ、色んな趣味のヤツがいるらしいし。  ボクは妹の言葉を思い出す。  「数を数えて夜が終わるのを待つんや・・・」  ああ、ホンマやな。   終わるのを待つだけやな。  お前はずっとそうやったんやな。  兄ちゃんが悪いんや。  兄ちゃんが弱かったから・・・。  「事務所の人間は後、数時間は帰ってこないからな、今日は長い時間楽しめるぞ」  男の言葉にげんなりする。  ウソやろ・・・・。  その時、ドアが乱暴に開く音がした。  次にしたのは、鈍い音だった。  そして、尻に入っていた 、ソイツのモノが抜ける感覚。  ボクは振り返った。   倒れた男。  そして、無表情なアイツ。  まだ脚が着地していない。  アイツが蹴ったのだ。  ボクは固まった。  アイツにだけは見られたくなかった。  アイツはボクを見ようともしなかった。   倒れた男の髪をつかんで引きずりおこした。    「人のモンに手ぇだすんは、あかんな」  冷たい声だった。  肘が顔面の中心に叩きつけられた。  鼻がグシャリと潰れる音がし、男の鼻は平たくなっていた。  頬の骨が折れたのだろう、目玉が飛び出していた。  「・・・許し・・」  男は許しを乞おうとしたが、それをアイツはゆるさなかった。   後頭部を掴んで顔面を床にたたきつけた。    歯が折れる音がした。  「オレのや。オレのモンや。何してくれてんの?」   その声に感情はなかった。   アイツは蹴って、男を仰向けにした。   さすがにしなびてしまったソイツ自慢の真珠入りのモノに目をやる。  「おっ、デカいもん持ってるやないかオッサン。何年か前のオレやったら相手したったのにな、でもな、これ突っ込むとこまちがえたな、アンタ」  何の躊躇もなく思い切り踏みつけられた。  肉が潰れる音がした。  男は絶叫する。  気絶していた。  それでもアイツは止まらなかった。  引き起こし、肋骨に膝を入れる。  折れる音がした。  痛みに意識を取り戻した男に、アイツは笑った。  「・・・お前、死ねや」  やっとそのあたりでボクは正気に返った。  「あかん、ソイツ殺したら、ソイツらと敵対しなあかんなる」  ボクは止めた。  何のためにボクが・・・。  「ふざけんな!」  アイツはボクを睨んだ。    めちゃくちゃ怒っていた。  「お前を誰か抱かせるくらいやったらな、殺し合いしたる。オレをバカにすんな!お前はオレのもんや!オレのモンはオレだけのモンや!」  気圧された。  

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