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V.S 8
「3人マンホールから向かってる、一人はあの子の彼氏」
中継役の女の子が報告してきた。
「まあ、こう来ることはわかっていたけどね」
ボクは予想通りの行動に安心する。
「スゴイ勢いで拡散されてるって言うてたやん。けど意味なかったなぁ、せっかくのオレの演説が。来るやん、やっぱり」
アイツはもういつも通りのハデなシャツだ。
ボクが選んだ服はさっさと脱いでしまった。
すこし残念。
「あの服はな、またそのうち脱がさせたる・・・脱がしたいやろ?」
そう囁かれ、思わず反応して、思わずキスしてしまったのは、ボクのあかんところや。
キスで済んで良かった。
本当、今はそれどころじゃないからだ。
「いい判断だな、敵もバカじゃないってこった。兄さん、あんたは人気者になる。今日をなんとか凌ぎさえすれば、あんたをそう簡単に殺せなくなる。人気ってのはそれだけの力がある。まずは今日生き残ることだ。流れは変わる」
長老が言った。
そうだ。
だからこそ、今日、明日のうちに、敵はボクらを潰しておきたいのだ。
これは、それだけアイツの言葉が力をもった証拠でもあった。
「10人下に行かせる。それでええな長老」
ボクは長老に言う。
「・・・無理はさせるな。あの坊やの彼氏は殺せないから足止めするだけでいい。何かあったら撤退させろ」
長老は言った。
ボクは頷く。
「オレ何したらええの」
アイツが欠伸する。
「ボクらの邪魔だけせぇへんといて」
ボク。
「役立たずは寝とけ」
長老。
アイツは拗ねる。
「オレ、いらんやん」
「あんたが出てくるようになったら、最後や。最終的にはあんたとボクが残りさえすれば、明後日以降からはボクらの勝ちになるんや」
ボクは言った。
皆が頷く。
「あたしらの勝ちになりさえすれば、あたしはいいよ」
女の子が言った。
それは集まっていた全員の気持ちだった。
「・・・ほな、全員で勝ちにいこ」
アイツが笑った。
この微笑みのためなら。
みんな死ねるんや。
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