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昨夜、自分に名刺代わりだとノートに名前を書いてきたあの男。麻倉律仁(あさくらりつひと)とかいう大樹先輩の友達だ。 「昨日、だいぶ酔い潰れてたから」 優しく微笑まれ、一瞬でもこの人を見た時に残念だなんて思ってしまったことを気が咎めた。助けて貰った身なのにそれが先輩だったらなんて、自分の醜さを感じる。 「だ·····大丈夫です」 渉太は上体を起こしては俯きがちに正座をする。それにしても、ほぼ初対面のこの人が何故自分といるのだろうか·····。 「なら良かった」 成人男性が二人、浴衣で向かい合ったまま沈黙が走る。あまり対面が得意ではない渉太にとってこの時間は苦痛だった。ましてや、初対面で自分が苦手なタイプの人間だと思った人。 「あ·····俺、帰ります。ありがとうございました」 沈黙の中、考えた末に自分が次に起こすアクションで帰ると言う選択肢しか無かった。 このままこの人といても気まずくなるだけ。 御礼を言ってこの場からさっさと離れよう·····。 渉太はベッドから降りては立ち上がり、 ズキズキと痛む頭を頭を揺らしながら、足元をふらつかせ、自分の荷物を探す。 「渉太くん、危ないっ」 部屋中を歩き回ってはソファに自分の鞄を見つけ、近寄ろうとした時、渉太の身体が大きく揺れた。自分でもまずいと思いながらも身体が重くて足に力が入らない。 身体が傾いたと思ったら、しっかりとした太い腕に支えられ、渉太はソファに促されると腰を下ろした。

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