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前方への視線を感じながらも余り食欲はなかったが気持ち程度にパンを千切り、口に運ぶ。
あれから律仁さんはルームサービスが来る前にシャワーを浴びていたので待ってる間の沈黙の時間は免れたが、向かい合って食事するのは、気まずい。
だが、聞いたら自分の失態に凹むのは分かっているが、昨日のあった出来事くらいは聞いとくべきだろうか。
「あの·····昨日の俺ってどんな感じでした?」
「そうだね·····」
律仁さんはマグカップのスープを一口飲むと昨夜のことを思い出すようにして考え始めていた。
「急にお酒を浴びるくらい飲んでぐったり倒れるようにして寝てたかな」
「そうですか·····」
酔いつぶれた時点で迷惑なのは承知だが、
お酒の失態と言ったら泣き叫んで暴れてなんてイメージがあっただけに、自分は周りに危害を及ぶようなことはしていなくて安堵した。
「だけど、帰り際になって俺を誘惑してくるから、お持ち帰りしちゃったよねー」
律仁さんはニヤニヤと楽しげな様子だったが、渉太の頭は一瞬にして真っ白になった。
「えっ!?どうゆうことですか!?」
確かに起きた時、下着以外は身につけていなかった。自分はきっと恋愛対象は同性だし、泥酔したらどうなるか未知数だっただけに、誘惑してないとは言いきれない。
自分が軽はずみなことをするとは信じたくないが、現場にいた当人が言っているのだから本当なのだろう·····。
そもそも律仁さんは不快じゃなかったんだろうか·····。
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