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それに、今まで君付けだった男に急に呼び捨てで呼ばれた。
律仁さんを見ても答えを待っているのか、ニコニコ笑顔なだけだし、渉太は動揺を隠せずにいた。今まで生きてきた人生の中で勿論、告白なんてされたことがない。思考停止状態の頭をフル稼働させては冷静に考えてみる。もはやこの人だから、冗談でまた揶揄われているような気さえしてきていた。
「付き合うって·····すみません、無理です·····」
渉太は俯きながら目の前の律仁さんに言った。きっと「冗談だよ」と笑って返されることは分かっていたが渉太の性格上、柔軟になんか返せないので正直に断る。
冗談だったは冗談だったで傷つくけど、そんなことでいちいち泣いていたらそれでこそ笑われるような気がした。唇を噛み締めて感情を押し殺せるよう身構える。
「そっかー残念」
律仁さんは頬杖を止めては、背中を椅子の背もたれにつけ本当に残念そうに身を引かせていた。
やっぱり本気だったのだろうか·····?
だったら申し訳ないことをした。
しかし、こればかりはどうにもならなかった。
大樹先輩は振られたも同然だからって好きでもない相手と付き合うなんてしたくないし、
それ以前に誰かと恋人同士なんて自分には望まない。全部自己防衛だけど、誰かと交わることで自分が傷つきたくなかった。
すると、律仁さんは鞄から雑誌を取り出すとテーブルの上でスライドさせるように指先で此方に流してきた。
「渉太くんが付き合ってくれたらこれ、返して上げようと思ったんだけど」
数週間前に発売された上裸の律が表紙のyanyanがテーブルの上に置かれる。こんな時でもいつ見ても格好良いと思う反面、公の場に広げられるのは正直恥ずかしい。家にも買い直したものがあるが、一人で見返すのでさえ躊躇うくらい·····。
「これは·····?」
「渉太くんがあの日、忘れてった雑誌。忘れたとゆーか俺が借りパクしたんだけど」
次から次へと爆弾を落としてくる律仁さんに感情が追いつかずにいる。ただ、失くして最悪な一日だったと凹んでいた要因が全て律仁さんだったと知って、この人は矢張り自分を揶揄って楽しんでいるんだと再認識した。
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