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「別に渉太が嫌なら無理して来なくてもいいからな。俺的には来てくれた方が嬉しいけど」 大樹先輩のその言葉はやっぱり狡い。 隣に彼女さんがいるにも関わらず、来たら嬉しいなんて言われると嬉しくて「はい。」と言いたくなってしまう。 しかし、行ったら行ったで結局自分が居るべき場所は大樹先輩の元しかなくて、隣に居ては苦しい思いをするだけ。 明らかに返事を待っている大樹先輩を前に早く答えを出したくても、自分の中との葛藤で返事を出せずにいた。 そんな中、律仁さんは暫くチラシを眺めた後、「渉太はいくよ。何、集合場所現地?」と呟いた。 「えっ、ちょっと何勝手に言ってるんですか」 勝手に話を進めようとする律仁さんに待ったをかけるように身を乗り出してはチラシを奪い返す。当の本人はキョトン顔だった。 てっきりさっきは助け舟を差し出してくれたから、俺が行きたくない理由を汲んでくれている人だと思っていた。 「そうだぞ、律仁。渉太の意見無視して勝手に返事するなよ」 大樹先輩は律仁さんのことをよく知っているのか、小さくため息を吐くと呆れた顔をした。そんな大樹先輩を他所に律仁さんは何処か納得していないような表情で眉をしかめて此方を見てくる。 「なんでよ。渉太、天体好きだからサークル入ったんじゃないの?俺、詳しい事知らないけど、こういうのって見たいか見たくないかじゃない?」 見たい見たくないで言ったら見たい。久しぶりに夜空に仰ぐ星を望遠鏡で覗いて、色々な可能性を想像して純粋に楽しみたいに決まっていた。

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