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律仁さんと目が合って我に返る。
律仁さんに全て自分の感情を見透かされているようで·····自分はそんなに顔に出ていただろうか。
いつもそうで、負の感情を抱くと直ぐに自分の殻に籠って勝手に傷ついて、自分しかみえなくなって·····。
「お前ら見つめ合ってどうしたんだ?」
何も知らない大樹先輩は無言の俺たちを首を傾げながら見ていた。
この空気がいたたまれなくて何か喋らないとと気持ちが焦る。
名前を呼んだだけで何も言ってこないし、律仁さんは何がしたいんだろう·····。
「いやー別に。あーそうだ大樹。何か用あったんじゃねーの?」
不穏な空気からの脱却と彼女の話から話題を逸らすように律仁さんが喋り出す。
「ああ、渉太にさ。今度、サークルの野外活動あるんだけど来ないかと思ってさ」
大樹先輩は何か思い出したかのように、チラシを取り出すと渉太に差し出してきた。
渉太は無言で受け取り、中の内容を読む。
来月中旬にあるサークルの野外活動での案内。丁度、七夕が近いから星座でも鑑賞するんだろうか。
正直、行きたい。
大樹先輩への好意が邪魔をして思い悩むことはあるけど、それ以前に星空を見るのは変わらず好きだし·····。だからサークルに入ったわけだし、今の季節は特に。
行くことに躊躇う理由が紛れもなく先輩に恋に落ちたときがその時だったからだ。
「えーっとそれは·····」
渉太が返事に困っていると律仁さんに渡されたチラシを奪われた。
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