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その所為もあってか、寄りかかってくる尚弥の旋毛を見ながら、背中に手を回すべきかと躊躇する。
本心では尚弥に触れたいけど、自分から触れてしまったらそれでこそ、尚弥への気持ちが抑えきれなくなってしまいそうになる。
渉太は持て余した手を徐ろに近づけては、離すを繰り返していた。
「渉太って。僕と違って暖かい」
渉太がもたもたと躊躇っていると、尚弥は渉太から離れては下から見上げてきた。
緊張感から解放されてホッとしたのは束の間、目線を合わせてみると尚弥ってこんな可愛かったっけ…と思うくらい上から見下ろすアングルの尚弥にドキドキした。
「あ、ありがとう……」
ただ単に褒められたのか、それとも…なんて。その言葉がどう意味しているかを考えてしまう。このまま尚弥を見つめていたら恋愛スイッチが全開になってしまいそうなのを慌てて目線を逸らしてやり過ごした。
「さっきの大丈夫だった?尚弥、頬赤いけど」
尚弥の微かに赤い頬を指すと手首を掴まれて、自分の掌が尚弥の頬を包むように触れていた。ひんやりしていて柔らかい頬がじわりと自分の体温で温まってゆく。尚弥が自分に触れた。
「大したことないから大丈夫」
数分前まで触れるか触れないかなんて攻防していたのは何だったのかと言うようにあっさり触れてしまった。
手から伝わる尚弥の気配に鼓動が速くなり、顔から身体が熱くなって頭がクラクラして倒れそうになる。
「尚弥·····」
自分の思考回路は馬鹿なのかと言うくらい、今の尚弥の行動から、もしかしたら目の前の相手も自分と同じ気持ちなのかと錯覚してくる。恋をするってこういうことなんだろうか·····。
「浅倉律ってさ、ラブソングよく歌ってるよね。渉太もやっぱりそういうの好きだったりするの?」
「えっ·····好きってゆーか·····。興味ない·····訳じゃないけど·····」
本当のことなんて言えない。目の前の尚弥の事が好きなんて·····。もしもの事を思っては表にするのは勇気のいる感情。
この状況で気持ちに蓋をするには難しくて、自分が勢い余って行動して仕舞わないように、平常心を保つのが精一杯だった。
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