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「尚弥、何してんの?」
窓に寄りかかり、スマホを覗き込むようにして声を掛けた。
演奏の時も感じていたが相変わらず、横顔が綺麗で切れ長の瞳が此方を向いては胸が脈打つ。
「別に、暇だったから」と言ってはピアノの弾いてみた動画を見ているようだった。
周りに動じずに四六時中音楽の事を考えている尚弥は改めて格好良いと思う。
「渉太はいいの?」
「俺あーゆの苦手だから·····」
「ふーん、渉太は僕とキスしたいとか思わないの?」
「えっ......それは.......その.......」
突然の問いかけに思考回路が止まっては、顔が熱くなった。
あの1年の時以来、尚弥とキスはしてない。
したいと思わないって言ったら嘘になる。
時折、あの時のことを思い出しては鼓動が早くなり、尚弥と距離が近いときは「キスがしたい」と思ったりするが、自制心が働いて行動にはしてこなかった。
それに、ふわふわと中途半端な関係が続いている中で突然尚弥に迫るのは嫌われそうで勇気はなかった。
俯きどうはぐらかすか、返す言葉に困惑していると、尚弥が顔を覗き込んできて、掌が臀部を触り、細い指がを後孔当たりをグリグリと撫で回してきた。
浣腸をされたような気分になり臀部の肉をキュッと絞めるように力が入る。
「尚弥っ!」
日野達にバレないように小声で名前を呼ぶが、悪戯に動く指は止まらない。
さっきあんな動画なんか見てしまったからか、変な感覚がして違和感で怖くなる。手を退けようと右手を後ろに回して尚弥の手首を掴む。
すると渉太の前方がズボンを緩く押し上げている事に気づいて咄嗟に隠すためにその場に屈みこんだ。太腿にグッと力を入れて必死に鎮まるのを待っていた。
「渉太どうした?」
唐突に屈みこんだ渉太に違和感を抱いたのか、日野が不思議そうに声を掛けてきた。
今の状態を友達にだけは知られたくない·····。
尚弥はどういう意図でこんなことをしてきたのか検討がつかなかった。
今までそんな素振り見せなかったし·····。
尚弥の行動に戸惑い、見上げて助けを求めるが、悪戯を仕掛けてきた当の本人は無表情に前を見据えたままだった。
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