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「ふーん。俺、そんなにまた簡単に会えると思われてんの?」 律仁さんは腕を組んでは怪訝な顔をして此方を見てくる。 「別にそういうわけじゃ………」 今自分は、とんでもない失言をしてしまったのではないかと冷や汗をかいた。 何を言っても言い訳に聴こえてしまうのではないかとその先の言葉が浮かばない。 俯いては自分の失言に反省していると、頭の上に手が置かれ、髪を梳気上げるように撫でられた。 自然と顔が上がり、柔らかい表情をして見つめてくる律仁さんの顔が映る。 「冗談だよ。そんな怖いもの見たような顔しないで。ただ渉太の中では優先順位が大樹なのにちょっとヤキモチ妬いちゃっただけ」 こんなマイナス思考の塊のような自分にも嫉妬してくれる人はいるんだ……。 素直に嬉しくなってしまったが、律仁さんは本当に自分のことをちゃんと想ってくれているのを感じて複雑な気持ちになった。 この人に嫌われたくないな……。 「渉太の言いかけた続き、聞かせて?」 撫でられた手が前髪を梳き上げられたまま、問いかけられては、離れていった。 「告白……大樹先輩に出来たんです。律仁さんに背中押して貰えなかったら出来ていなかったのでお礼を伝えたくて……」 律仁さんの言葉でもう一歩先に進むことができた。「ありがとうございました」と軽く頭を下げて感謝の気持ちを述べた。 「結果は見ての通りですけど」なんて自虐的に強がって笑ってみるが、失恋のショックというのは大きい。だけど、自分のためにも律仁さんに為にも前を向かなきゃ行けない。 ずっと後ろを向くわけにいかないから……。 渉太は律仁さんを見据えるとギュッと両掌を握る。 「正直本人に直接振られるのはショックでしたけど、心の蟠りはなくなった気がします」 「それは良かった。じゃあ、遠慮しなくていいんだね?渉太に俺を俺として好かれてみせるから……」 「えっ?」 はにかんで来たかと思えば、真剣な顔して呟やくようにして言ってきた律仁さん。 渉太は最後の言葉の意味がよく分からなくて聞き返してみたが、肩を叩かれ「渉太、帰ろうか」と先に行ってしまったのでこれ以上は聞くことは出来なかった。

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