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結局、大樹先輩に「律仁さんは今忙しいんですか?」と訊いてみたら「まあーあいつ最近、一日中仕事してるみたいだからなー」とだけ返された。 素行が謎のままの律仁さんが「何の仕事をしているのか」を訊こうとしたら、「渉太、律仁のことそんな気になってんのか?」と茶化したように問い詰められて、顔を真っ赤にしながら否定をしたが、そこで昼の時間が終わってしまい、結局真相は分からずじまいだった。 そんな会話を大樹先輩とした日から数日。 世間一般でいう休日の土曜日の夕方。 平日は学校があるので夜間が中心だが、土日だけは一人暮らしで稼ぎたいもあって、渉太は午前10時から17時まで自宅から1駅先のコンビニでアルバイトをしていた。 時刻は午後17時、更衣室と言うほど広いわけではない裏の小さな一室の手荷物置き場で制服から私服に着替える。 着替えの途中で帰り際、夜番の高校生アルバイトの女の子が出勤前に買い物ついで来たレジで話していたのを思い出した。 どうやらこの辺で律が出演しているドラマの撮影がされているらしく「今、近くの大きな公園で律を見たの!」と興奮した面持ちで同じアルバイトの子に話しかけていた。 超有名人、超人気アイドルなだけに若年層では知らない人がいないくらいな浅倉律は当然、うちのアルバイトでも知っている子は多い。 その話を訊いた途端、渉太の胸がすくみ上がった。 近くに憧れの律がいる……。 もちろん行こうとしていたあの一件以来コンサートに足を運んでなどいないし、生で動いている律を見たことはない。 見られるのであれば見たい……。 アルバイト先を出て、その話していた公園の方へと自転車を走らせた。 見れたらラッキーくらいに思っておけばいい…。 くらいで漕ぎ始めたペダルだが、場所が近づくにつれて、もしかしたら間に合って、一目見れるかもしれないと言う期待で渉太の胸は膨らんでいた。

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