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上手くは言えないかもしれない。
明確なものはないけど、この人が困っていたら助けたいと思った。
苦しんでいたら手を差し伸べてあげたいと思った。
過去が苦しくて前に進めずに踠いていた自分を救って背中を押してくれたのは律仁さんだから、今度は自分が律仁さんに返したい。
渉太は両掌を握り、腿の上に置くと、背筋を伸ばして律仁さんに向き直った。
「俺、まだ自信ないですけど律仁さんと先に進めたらなって思ってます。だから律仁さんが辛い時には 律仁さんが俺にしてくれたみたいに……俺も律仁さんの力になりたいです」
告白と言えるのか曖昧な所だか、今の正直な気持ちがこれだった。
さっきは「会いたかった」のに己の羞恥に負けて、はぐらかしてしまったから挽回とまではいかなくても、自分の気持ちを律仁さんにちゃんと伝えることくらいはしたかった。
「ありがとう。渉太、会わない間に凄いいい感じになったね」
律仁に柔らかく微笑えまれて、眼鏡の奥の瞳の綺麗さに思わず顔が熱くなっていた。
律仁さんに褒められて嬉しい。
今まで自分が出来なかったこと、世界が変わったこと感謝を伝えたくて、渉太は前のめりに気味で話し出した。
「あれから少しサークルの人達と積極的に話せるようになったんです。だから、毎日学校が楽しくて……そうなれたのは、律仁さんのおかげです」
「俺のおかげだなんて、俺を過信しすぎ。
でも、嬉しいよ。渉太の中で俺の存在が大きくなったってことでしょ?」
律仁さんの言う通り自分の中で律仁さんの存在は確実に大きくなってきている。
気持ちを伝えた後で恥ずかしいも何もないが、本人に直接言われて答えるのは、なかなか口を割って話すことはできず、渉太は深く頷くだけで精一杯だった。
「だけど、渉太がそうやって積極的になったのは渉太自身が頑張って前に進もうとしたからだってこと忘れないでね」
ついつい過小評価してしまう自分をこうやって持ち上げてくれる律仁さんに安心する。
救うつもりが結局、救われてしまった感が否めないが律仁さんが発する言葉が魔法のように自分を勇気づけてくれることには間違いはなかった。
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