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勇気づけてもらって、否定するのも変な気がして渉太は深く頷いては「ありがとうございます」と本人に聞こえるか聞こえないかのような声で呟いた。 進んだのは自分だったとしても、律仁さんのおかげには変わりないから……。 「渉太はさぁ……もし好きな人が芸能人と付き合えるってなったらどうする?」 「えっ……」 少しの沈黙の後、律仁さんは眉を寄せては真剣な面持ちでそう訊いてきた。 何で急に芸能人がでてくるのだろうか……。 好きな人って……? 律仁さんは芸能関係の人と関わりがあるみたいだから、律仁さんには本当は好きな人がいて……なんて本当かも分からない勝手な憶測を立てては物案じする。 もし、そうだったら嫌だと思ってしまう自分がいた。 「そんな本気にして身構えないでよ。例え話だから。渉太ならどう思うのか気になっただけだから軽い気持ちで答えて?」 余程険しい表情で考えてしまっていたのか、律仁さんに諭されててしまった。 緊張感をほぐすように、微笑まれる。 「分からないですけど、諦めると思います。そもそも俺と芸能の方とじゃ住む世界が違うと言うか……」 律仁さんがどういう意図で訊いてきているのは分からなかったが、訊かれたからには今自分が思ったままに答えた。 「じゃあ、それが渉太の好きな律だったら?」 「余計に想像出来ないし、ゲイの俺と付き合っちゃいけない気がします。世間のイメージがあるから」 もし、律と付き合えるってなったら自分は身を引く気がする。 どんなに律が好きで盲目になろうとも、推しに対しては付き合いたいとか恋人になりたいとかじゃなくて、あくまで演者とファンとの距離感でいたい。 律にいくら認識を得られていたからって自分のことは一ファンとしか思われてないだろうし、渉太にとっては天と地の差くらい遠い存在だった。 そんな渉太の返答を聞いて、律仁さんは声音を落とすと「そっか……渉太はやっぱ真面目だなー」と苦笑いしていた。

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