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そんな律仁さんとただの友達ならまだしも、俺は一歩先を進みたいと思ってしまっていた。
憧れの人に好きだと言われていたからってそれでぬか喜びしていい問題じゃない。
嬉しさも少なからずは持ってはいたが罪悪感の方が大きかった。
そんな動揺してる渉太を気遣ってか、大樹先輩が「続けて大丈夫か?」と声をかけてきたので静かに頷く。
「今回は俺の元カノが原因だったんだ。彼女は最初から律仁が目当てだったんだよ」
先輩の横顔が何処か悲しそうに笑う。
律仁さんが目当て……?
先輩の言っていることの意味が分からなくて頭の中が疑問符だらけになる。
「渉太は律のファンなんだろ?なら知ってるか?律がソロになる前、デュオで組んでたこと」
「聞いたことあります……その相方さんは学業専念のために辞めて、律はソロに……」
律がソロで成功する前、二人で組んでいた時があった。
子供時代からテレビに出ていて、そこそこ人気があった律がデュオでアイドルデビューして一年半程で相方がいなくなってソロになった。
自分が律を好きになったのはソロになってからだった。姉貴はその前から好きだったみたいだから、何度かその時のCDを借りたことはあったが、渉太はそれ以前のことは当時小学生だったこともあって全部ネットの情報上でしか知らない。
だけど、姉貴が雑誌を見せびらかしてきた時の17歳くらいの律は既に出来上がっていて見惚れていた印象がある。
それから徐々に好きになったから……。
「別に隠すことでも無いし、過去のことだから誰にも言わないでいたんだけどさ、その相方、俺だったんだ……」
先輩は歯切れを悪くして、こめかみを人差し指で搔いていた。
渉太は次から次へと舞い込んでくる事実に驚いては思わず両手で口を抑えた。
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