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今回渉太がインターンシップを兼ねた新人マネージャーなんて表面上の言い訳で、律仁さんの仕事現場にお邪魔することになったのは、数週間前のこと。
いつものようにバイト終わりに迎えに来てくれていた律仁さんの車に乗り、家路に向かう。途中で明日の予定の有無を聞かれ、明日は昼から大学だと告げたら、寄り道をしてくれることになった。
普段日中に王道なデートスポットや長い時間一緒にいる事が出来なくても、こうやって律仁さんと会話をしながらのドライブデートができる時間が、お忍びで大学にも律仁さんは来れなくなってしまった今、貴重だった。
そして何よりも渉太の一番好きな時間。
噴水がある公園で車を止めて散歩がてら並んで歩く。
「あ、律仁さんツアー発表おめでとうございます。すみません、今は仕事の話するべきじゃないのに……」
あまり仕事の話はするべきではないと思っていても、丁度この日は律のツアーがお昼に発表された日。スルーする訳には行かなかった。
「ああ、いいよ。ありがとう。律が好きなこと込みでの渉太だから、遠慮しないで。あまりその話ばかりされると嫌だけどこれくらいなら許容範囲だから」
「ありがとうございます……つい……俺的には嬉しくて」
未だに律のライブには行ったことない渉太だが、律のコンサートツアーにアルバム発表はやっぱり本人を目の前にしていても喜ばしいことだった。
律のキラキラと輝いているところは見たいだけど、未だにライブには足を運んだことがないうえに恋人の自分は行っていいものなのか。
「渉太、来てよ?」
「えっ、あ、……はい」
渉太は顎に手を添えて考えながら歩いていると躊躇していたのを見破られたかのように律仁さんに問われて、思わず挙動不審になってしまった。
「ちゃんと関係者席取っといてあげるから」
「そ、それはっ申し訳ないですっ。行くなら自力でとります」
てっきり自分で抽選をかけてチケットを取るものだとばかり思っていたので、度肝を抜かされ声が裏返ってしまった。
そんな渉太を見て「だと思った」と行動を読まれ、くくっと堪えるように律仁さんに笑らわれているのが何だか恥ずかしいけど、クールな顔が崩された笑顔はやっぱり愛らしかった。
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