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「そういえば、渉太は藤咲との仲直りはできたのか?」 はしゃいでる自分に恥じらっていると、 大樹先輩が藤咲の話題を振ってきて、胸がドキリと鳴る。 「仲直りというか……まだまともに話も出来てないです。一度、律仁さんの力を借りて藤咲くんに近づくこと出来たんですけど、突っぱねられてしまって……それっきりで……」 「そうか……」 あの撮影の日以来、藤咲には会えなかった。 藤咲どころか律仁さんもここ最近はコンサートが近いことや、次クールのドラマの撮影が始まったのもあって、連絡は取れているものの会えてはいなかった。 だからと言ってリハーサルにお邪魔するなんて図々しいことは言えなかったし、多忙な律仁さんの負担を増やしたくなかった。 周りが「うちわの律が格好良くてー」なんて今か今かと浮かれ気分の中、一瞬にして重たい空気になってしまう。 「藤咲くんと先輩は昔どんな感じだったんですか?」 このまま黙りを続けるわけにもいかず、かと言って露骨に藤咲の話題を避けるも不自然に感じた渉太は藤咲の話題を続ける。 単純に興味があった、俺の知らなかった頃の尚弥のことが……。 「よく笑ってたよ。家族ぐるみだったから偶にホームパーティとか呼ばれたりしてさ」 先輩は少し黙り込んだかと思えば、ひとつひとつ尚弥との出来事を思い出すかのようにゆっくりと話し始める。 「ああいうのって大人ばっかり楽しくてさ、子供はすぐに退屈してただろ?そういう時、俺も幼少期はピアノ習わされてたから、藤咲とよく連弾して遊んでたんだ」 確かに俺が一生懸命に律の話をしたときや、クラスの連中と一緒にいた時によく笑っていたっけ……やっぱり一緒にいた時の藤咲は嘘なんかじゃない。 「先輩は、もう一度藤咲くんと仲良くなれるならなりたいですか?」 「どうだろなー。藤咲が抱えてるものに気づいてやれなかったのが心残りなだけかも。俺、本当、人の気持ちには鈍感だからなーだから彼女にも振られるんだよな」 大樹先輩は珈琲に口を付けて自虐的に苦笑した。先輩は自分を鈍感だというけど渉太はそうは思わなかった。

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