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「そんな子供みたいな真似しないでちょうだい。律さんだけじゃないのよ?他の方にも沢山の人に迷惑をかけるし、あなたの今後の活動にも……」 藤咲の手を引いて会場へ戻ることを促すマネージャーさんに対して、その手を強く振り払ってはキツく睨む藤咲。 渉太は自分が仲裁には居るべきか悩んでいた。藤咲が会場にいないってなると会場のスタッフ内で大騒ぎになっているんじゃないんだろうか。 大事な律とファンとの周年公演のファイナル。ファンへの恩返しにとアルバムから春の握手会、この一年かけてきた行事の最後を締めくくるだけに律仁さんが悔やむような公演にはさせたくない。 「渉太、これは不味いんじゃないのか?」 渉太が悶々と二人の様子を伺いながら考えていると大樹先輩も同様なことを思っていたみたいだった。先輩の言うようにこのまま藤咲が出演中止は不味い。 しかし、何故藤咲が出たくないと言い張っている理由も分からないのに無闇に自分たちが出ていってったところで、今まで散々真面に話してくれなかった藤咲を説得できる自信は無かった。 それでも、律仁さんのためをと想って仲裁にでることを決意して一歩踏み出そうとした時、ボアジャケットのポケットが振動し始めて足を引っ込めると携帯を取り出した。 画面を確認すると着信先は律仁さんからだった。 一瞬だけ大樹先輩と顔を合わせると、頷かれたのを合図に通話ボタンをスワイプする。 大樹先輩も内容を聴こうと渉太の電話に耳を近づけてきた。 「もしもし?」 『あ、渉太?ごめん、こんなときに』 「いいえ」 『いきなりなんだけどさ、尚弥くん見かけなかった?』 電話に出たときから、律仁さんが開演一時間前に掛けてくる用事なんて一つしかないと思っていたが、案の定藤咲のことだった。 電話越しの後ろの方からドタバタと慌ただしい周りの声が聞こえてくる。

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