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1時間並んだ末、お目当てのグッズを購入しては開演まで後一時間程ある。開場はしているものの関係者席に入る俺たちはギリギリに入ることにして時間潰しの為に近くの飲食店でひと休みすることにした。 藤咲のことで少し微妙な空気になってしまったし、藤咲を避けるような先輩に多少ショックではあったが、憧れている先輩には変わらないし、人間誰しも完璧なんかじゃないから逆に親近感が湧いた。 気を取り直して先輩と冬の星座や天体スポットの話題で盛りあがっては「いつか自分も自動車免許をとって律仁さんを連れて行けたらなー」なんて考えていた。飲食街までの広い歩道橋通路を歩いていると、見覚えのある2人組が目に止まる。 スーツの女性と黒いロングコートを羽織った 男。マネージャーさんと藤咲がそこにいた。 柵の前で此方に背を向けているが、藤咲の佇まいと見覚えのあるスーツのマネージャーさんで一瞬で判別ができた。 何か言い合いをしているのか、とても穏やかではない状況。開演一時間前だというのにこんなところで何をしているんだろうか。 大樹先輩は気がついていないのか、そのまま素通りしようとするのを慌てて止めては、近くにあった植木の陰に隠れる。 別にコソコソ隠れる必要などなかったが、情景反射で足が動いてしまった。 藤咲の会話が聞こえるくらい目と鼻の先。 訳も分からず連れてこられた大樹先輩は、最初は戸惑いを見せていたが、渉太の目線の先にいる人物で、察したのか「あれ、藤咲か?」と眉を寄せて問いかけてきた。 渉太は静かに頷いては先輩の問いかけに応えると2人に集中する。 「尚弥、戻りましょう。開演まで時間がないのこのままだったら律さんに迷惑がかかるわ」 「だから?僕は出る気はないよ」 「ここに来て何を言ってるの」 状況は詳しくまではいかないが、藤咲が会場を抜け出してマネージャーさんが連れ戻しに来ているということだけは判った。

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