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渉太はゆっくりと近づき、正面に立つと俺の存在に気がついた律仁さんは顔を上げ、上体を起こした。 「あの、パジャマ……新しいのですよね?俺のためにありがとうございます」 「渉太に似合うかなーと思って」 「凄く肌触りがよくて毛布着てるみたいで暖かいです」 「ちなみに俺も」 律仁さんは両手を広げパジャマを見せてくると俺が着ているのと同じ形の色違いを着ていた。灰色で襟には白い線。此方は少し色のせいもあるのか、はたまた律仁さんが着ているからなのか大人っぽい。 渉太は思わず両手で顔を隠しては悶えてしまった。律仁さんもとい律のパジャマの破壊力……。雑誌のアイドルのパジャマグラビアがどんなにヲタク心をくすぐるか。 「渉太どうした」 「すみません……ヲタク心に火がついてしまったというか……今はあくまで律仁さんだって分かってるけど、律のパジャマは犯罪級というか……それなのに俺がお揃いなんて着てしまっていいんですかっ。俺、申し訳なくて脱ぎたくなりました」 そんな渉太が面白かったのか、律仁さんは吹き出すように笑う。 「そんなこと言わないでよ。俺が渉太のために買ってきて自分のは単なるおまけ。折角なら渉太とお揃いしたくてさっ。それに、渉太の方が凄く似合ってるよ」 嬉しいような複雑な気持ちのままどう返すべきかも分からず、とりあえずもう一度御礼を言うと「隣においで?」と律仁さんに促されたので渉太は大人しくソファ座った。 再び再生されるパソコンの映像とノートとペンを持って何やら書き込んでる律仁さん。 広いコンサートホールの映像に、キラキラとした衣装に身を包んだ律が映る。時折早回しをしていたが、歌っている曲も最近のアルバムの曲だしDVDでも見たことない。 これは今日のライブの映像じゃないだろうか……そして紙に書き込んでいるのは反省だろうか……「~からの歌い出しが走ってしまった」なんて書かれている。 そう思った途端に渉太は観てはいけないものを見てしまったような気がして俯いた。

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