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「すみません。俺、先に寝室行ってますね」 これはきっと邪魔しちゃいけない。 そう思って立ち上がろうとした時、右の手首を掴まれ、座り直すよう引っ張られてしまった。 「待って。隣にいて」 渉太は抵抗には逆らえずに、そのまま大人しく座るが、流れている映像に目を向けることが出来ずにいた。 「やっぱり俺、今日の映像なんて見れないです……それに律仁さんの邪魔になってしまいます」 「邪魔なんかじゃないよ。渉太のそういう所凄く愛おしいよ。グッズだって言ってくれたらあげたのに」 鞄と一緒にソファの脇に置かれた、ショップバックに律仁さんの目線がいく。 本人の前で本人がプロデュースしたコンサートグッズを手にしてるなんて恥ずかし過ぎるが、律仁さんに会いたい一心でアトリエに向かっただけに、そのまま持ってきてしまっていた。 「それは俺のファン心に反する気がして……」 渉太が吃るように言うと、律仁さんは「渉太はファンの鑑だよ」なんて声を上げて笑う。 「でも、ごめんね。渉太といたいなんて誘っておいて放ったらかしにして。でも、どうしても今日の忘れないうちにまとめときたくて、今日の反省もだけど思ったこととか次はこうしようと思ったこととか……」 「反省なんかしなくても会場は盛り上がってたし、大樹先輩も最高のアイドルだって感激してました」 ファンのみんなだって、デビュー曲で泣いてる人もいたし、全部は観れていないにしても、俺からしたら今日は大成功に見えた。

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