226 / 295
※※
※※
ここは素直に引いた方がいいんだろうか……中途半端にバランスの崩れた上体を戻そうと腕をベッドにつこうとしたとき、腕に律仁さんの下半身で緩やかに高まったものが当たる。
「あっ……」
「渉太の責任です」
「えっと……ごめんなさい」
律仁さんの顔を見ると凄く険しい顔をしていたので、不覚とは言えども触れてはいけなかったような気がして渉太は慌てて上体を起こした。
「冗談だよ。俺ばっかりこんなんでごめんね、かっこ悪い。凄く渉太に触りたい、沢山キスしたいって思うけど、この間みたいに渉太を怖がらせたくないんだ」
律仁さんが少し寂しそうに微笑んだ。恋人だから俺に触れたいのに、俺が拒絶した事で傷つけてしまったんだと痛感する。断るにしてももっと、傷つけない断り方があったはずだから……。
こんなにも自分の気持ちを大事にしてくれる人。俺の事、過去も全部、親身になって受け止めてくれて時には手助けをしてくれて、芸能人だからって決して高飛車な態度を取らずに対等でいてくれる。
そんな人が興味本位で襲ってこようとした奴らと一緒なわけない。自分が律仁さんとなら大丈夫だって信じて踏み込んだんだから、渉太は律仁さんの気持ちに応えたかった。
「律仁さん……我慢しなくていいよ」
「えっ……?」
「俺もっ律仁さんに触りたい……から……もっと俺に甘えて下さい」
渉太は律仁さんの手にそっと触れる。
恥ずかしいし怖いけど、嫌じゃない。
「また渉太に嫌な思いさせるかもしれないよ?」
「しないです……律仁さんになら…」
確信はない、そう簡単に克服できるものじゃないと分かっていても、自分を試したい。
律仁さん何されても大丈夫、それくらい渉太の気は大きくいた。
すると、おでこをペシンと指で弾かれる。
渉太は反射的に目を瞑ったが骨に響かない痛さだった。普段なら攻めてくるくせにいざとなると誤魔化しだす律仁さんに焦れったさを感じる。
「こら、そういうこと簡単に言わないの。渉太とできたらそれは、嬉しいけど、そういうことは大事なことだし。自分を大事にしなさい」
「じゃあ、覚悟できたって俺の本気受け取ってくれますか?」
「……しょっ」
渉太は困惑しながらもムードを壊して避けようとする律仁さんに近づいて、無理やりキスをした。何回も律仁さんに引き寄せられるようにキスをする。いつもの律仁さんがやってくれているように唇を自分ので摘んだり。唇だけじゃなくて頬にもしていると、律仁さんのスイッチが入ったのか腕が腰へと回ってきた。
少し腰が持ち上がったかと思えば、「おいで?」と言われ律仁さんと向き合うように膝の上に乗せられる。
「渉太のキスは小鳥みたいで可愛いね」
「こ…ことりっ。そんなつもりじゃ……」
自分なりに今までの律仁さんを思い出しながら、色っぽく誘うつもりでキスしたのに、小鳥だとか色気の欠けらも無い揶揄をされて、恥ずかしさの余り律仁さんの肩に顔を埋めた。
ともだちにシェアしよう!