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俺を頼ってくれている藤咲が素直に嬉しいが、ここは素直に藤咲の隣に行くべきなのか考えものだった。 律仁さんには『行くな』と眉間に皺を寄せて目で訴えてくるし、藤咲も負けじと俺の事を見てくる。大樹先輩に至っては藤咲との距離が掴めてないのか戸惑っているようだった。 藤咲の事情は本人に聞いたし、この前の様子から先輩を警戒していることは分かる。 丸く収めるには、自分が藤咲の隣に行くべきなのだろうと思うけど、恋人として律仁さんの隣を簡単に譲ってもいいものなのかと思い直す自分もいた。 だけど、この空気が耐えられない……。 渉太は「ここは律仁さんに我慢して貰って……」なんて思いながら、意を決して立ち上がろうとした時、律仁さんに手首を捕まれた。 「渉太、行く必要ないよ?」 「えっ……と……はい」 思い切り手首をクイッと引かれて、バランスを崩しながらも、結局腰を下ろし直してしまう。藤咲がそんな渉太の様子を見てつまらなそうに顔を歪めていた。 「大樹と気まずいのか知らないけど、俺の恋人を君のいいように、コキ使わないで貰えるかな?」 顔をニコニコとさせながら藤咲に訴える律仁さんの目が笑ってない……。『多い方が楽しいじゃん』と言っておきながら、律仁さんから不穏な空気出していることに、矛盾を感じながらも渉太は身が竦む思いでいた。藤咲はそんな律仁さんに対して全く動じていないのか、そっぽを向いては口をへの字に曲げて、黙りしているだけ。 「俺、歓迎されてないみたいだし帰ろうか?」 そんな誰にでも分かりそうな、二人の間に流れているピリついた雰囲気に先輩も空気を読んでその場を立ち去ろうとしていたが、律仁さんによってすぐに止められる。 「いや、でも。俺、邪魔者だろ?渉太も困ってる」 「俺たちの今後の事にも関わるから、大樹はいろっ」 律仁さんは眉に皺を寄せて少しご立腹なのか、空いた座席を指差しながら先輩を座席に促す。いつも頼もしく見える先輩は小さく背中を丸めながら藤咲に断りをいれては、半ば不機嫌な藤咲を気にしながらも椅子に腰をかけた。 俺たちの今後と大樹先輩が同席することと何が関係しているのだろうか……。

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